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菊の咲き誇る時節

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0710-3旧暦9月9日(新暦では10月)を「重陽(ちょうよう)の節句」といいます。

万物の化成は「陰と陽」という相反する2つの気の消長によるという中国の陰陽五行(おんみょうごぎょう)説では、奇数を陽数、偶数を陰数といって、陽数が重なることを重陽と呼び吉祥の徴とされてきました。

日本でも1月7日の人日(じんじつ・古く中国では1月1日を鶏の日として、数えて7日を人の日とする風習があったことから)、3月3日の上巳(じょうし)、5月5日の端午(たんご)、7月7日の七夕(しちせき)、9月9日の重陽、を五節句として陽数の重なる日を祝う風習が古くからありました。

9は数字の中でも最大の陽数で陰陽五行説では陽数の極まる数とされ、その9が重なる9月9日は重陽の中でも吉日とされてこの日の行事を特に重陽の節句と呼ぶようになったのです。

また菊の咲き誇る時節であることから菊の節句とも呼ばれ、重陽の行事に菊の花は欠かす事ができません。

古く中国では菊の慈液には不老長寿の効能があると信じられていたため、日本にも伝わった重陽の節句に菊花を浮かべた菊酒(きくざけ)を飲む風習も、もとは薬草として日本にもたらされた菊のその薬効を期待しての事に他なりません。

また重陽の前日、咲いた菊が夜露に濡れないよう綿で覆う「菊の被せ綿(きせわた)」は、翌朝露や香りが移ったその綿で顔や体を拭うと若さを保つと信じられていたため、女性達は菊から外したその綿で願いを込めて手足や顔を拭ったといわれています。

現在でも中国では小さな菊を乾燥させた菊花茶(きっかちゃ)は延命長寿のお茶と呼ばれ、解熱・解毒作用、眼精疲労回復、高血圧予防など様々な効能があるとされています。

特有の香りが強いので苦手な方は普段飲んでいるお茶に一つ浮かべて飲むだけでも、立ち昇る香りにはイライラを解消するなどの芳香効果があります。その美しさから四君子の一つとされる菊の花。長い冬を迎える前の最後に咲き誇る花として古人は菊をこよなく愛したといいます。

いにしえの習しに従い菊を愛で重陽の吉事を祝ってみてはいかがでしょうか。

(文:現庵/絵:吉田たつちか)

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