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鍋料理はもともと一人鍋が正しかった!?

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1501-01カラー1●もともとは一人鍋が普通だった鍋料理
寒い季節、家族や大勢の仲間と一緒に、一つの鍋を囲んで食べる鍋料理は実に美味しいもの。ところがこの鍋料理、もともとは一人鍋が普通だったのです。
いまでもどじょう鍋などは小さな鍋に一人前ずつ出てきますが、あのように小鍋で食べるのが一般的だったのです。
日本人には世界でも独特の清潔意識があります。それは家族であっても、違う食器を使うということ。
おそらく、これをお読みの皆さんのご家庭でも、お箸やお茶碗など、お父さんの、お母さんの、おばあちゃんのと、家族一人一人、個人用のお箸やお茶碗があるのではないでしょうか?
皆さんはそれが普通だと思っているかも知れませんが、この習慣は日本独特のもの。
海外で「ぼく用のナイフとフォーク、お父さん用のナイフとフォーク」などと使い分けているところは、まずありません。
なぜ、日本ではこのような習慣があるのかというと、一種の宗教的なもので、別の人の食器を使うと何となく「汚い」と思うようなのです。汚い、つまり『他人の食器を使うと穢れる』という意識が、日本人にはあるようなのです。
そんな日本人ですから、鍋料理も昔は、みんなで鍋をつつくということは、あまりなく囲炉裏などで大きな鍋を囲む場合でも、料理を取り分けて食べていたと考えられています。

●コンロや七輪、火鉢の普及が一人鍋を普通にした
鍋料理が一般に普及したのは、コンロや七輪、火鉢が普及してからでした。
つまり料理をする場所が、台所のカマドや流しだけではなく、コンロや七輪、火鉢といったものが、室内に入ってきたというわけです。
時代でいうと、江戸時代の終わりころに、おでんや湯豆腐、ちり鍋といったものが登場してきます。
明治になると、牛鍋が登場します。
しかし、みんなでひとつの鍋をつつく、いまの鍋料理はなかなか普及しませんでした。

●カセットコンロが鍋料理を家庭料理にした!
鍋料理が一般に普及し、各家庭で楽しめるようになったのは、意外と最近で、なんと1970年代半ば頃からといわれています。
それまでは鍋料理はお店で食べるものだったのです。
それが69年にカセットコンロが発売され、爆発的にヒット! このカセットコンロが鍋料理を一般家庭に普及させた最大功労者といっていいでしょう。
それまで、直箸で料理をつつくのを「ケガレ」と考えていた日本人の潜在意識を少しずつ変えていったのです。
それまでは、同じ鍋から料理を食べるのを「ケガレ」と考えていた日本人も、最初は家族、そして親しい人の証しとして、直箸で食べるようになる人も出てきました。
まさに「同じ釜の飯を食った仲」ではなく「同じ鍋から食べた仲」といった感じでしょうか。
いまや鍋の世界もトマト鍋やミルク鍋、豆乳鍋、チーズ鍋と次々に新しい鍋料理が生まれていますが、これももしかしたらカセットコンロのおかげかも知れませんね。

(食文化研究家 巨椋修(おぐらおさむ))2015-02

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