この春、晴れて小学一年生になった姪に私の父が何か記念にプレゼントをしたいと考えた。孫がこれから学校で勉強していく上で必要なもの……それは、地球儀だと思いつき、早速通販で学習用地球儀を購入したのだ。そして先日、姪が遊びに来た時にダンボール箱
から出して見せると、姪は「日本はどこ?」という質問より先に、クルクル地球を回して遊ぶ。ああ、その昔、私もこうやって地球儀を回して遊んだなと子供の頃を思い出し、つい微笑ましくなってしまった。
しかし、微笑んでばかりもいられない。やっと動きの止まった地球を姪と見ていると、日本の下、赤道を越えた日付変更線沿いに、あのツバルがあるではないか。すべての国名が平仮名で表記され、ごく小さい島など載っていない子供用学習地球儀に、なぜ、同じように小さな島であるツバルが載っているのか不思議に感じた。
ツバルは、国土面積25.9平方メートルという南太平洋に浮かぶ島国だ。人口1万2千人弱で、ココナッツやタロイモ、バナナなどを栽培する常夏の楽園が、水没の危機にさらされているという報道は記憶に新しい。地球温暖化の影響で、このまま海面の温度が上昇し、南極の氷が解けたら一番に海のなかに消えてなくなるだろうと予想されている島なのだ。
この地球儀を見て、ふと考えた。もしかしたら、数十年後には地図上に表記されない国になってしまうのではないかと。
子供用学習地球儀に、その名前を載せるのには大いに意義がある。この島がなくならないように、今から子供達に地球温暖化の恐ろしさと悲しさを伝え、次世代を担う彼らにこの問題を真剣に取り組んでもらうよう指導する必要があるのだ。残念ながら、今の大人には各国のさまざまな思惑が衝突し、これといった地球温暖化対策は打ち出されていない。現在の子供が国家レベルではなく、地球レベルで考える大人に成長して欲しいと大いに期待する。
(小説家 華山姜純/絵:吉田たつちか)2010-04