人間を含む動物もその起源をたどれば海にいたのです。その名残で、人間の体液の構造は「海水」にきわめて近い性質を持っています。
そして、海水に似た体液は、個々の細胞が住みやすいように、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、塩素といった成分を常に一定のバランスに保つように、微妙な調整を行っています。また、人間の体液は弱アルカリできわめて狭いPH(ペーハー)の範囲でコントロールされています。この調整機能をホメオスターシス(恒常性維持機能)と言います。だから酸性の体質がアルカリ性になるといううたい文句でアルカリイオン水といっているのは全く意味がないのです。
そもそも弱アルカリ性の水を飲めば体内がアルカリ性になるなんて発想が根本的に間違っています。なぜなら、われわれ人間の胃は、胃液を出しますが、胃液は強い酸性であることを知っていれば、アルカリ水がいかに馬鹿げているかすぐわかります。もし、本当に胃液を中和させようと思ったら、一度に何リットルものアルカリイオン水を飲まなければならないし、そんなことをしたら胃の方がますます酸性の度合いを強めようとします。すなわち、胃酸過多を起こしてしまう危険性が強いのです。
(薬剤師 三上治美/絵:吉田たつちか)2004-07