(絵:そねたあゆみ)
●江戸時代の夏バテ対策
暑いですね。夏バテとかになっていませんか? 夏バテの主な原因は、高温多湿になって睡眠不足になりやすくなる。暑いために清涼飲料等を飲み過ぎて胃が疲れて食欲がなくなる。そうめんや冷や麦といった炭水化物が多くなり、栄養のバランスが崩れる。汗がたくさん出て塩分やミネラルが足りなくなり体調を崩してしまうなどがあります。
この困った夏バテの対策としては、いろいろ言われておりますが、江戸時代の人たちは、どんなものを食べて夏バテ対策をしていたのでしょうか?
江戸時代の人たちは『う』のつく食べ物を夏バテ防止に食べていたといいます。例えば『うなぎ』ですが、江戸時代どころか平安時代に書かれた万葉集に「夏痩せにはうなぎがいい」という歌があるくらいで、日本人は夏バテ防止のために、ずいぶんと昔から『うなぎ』を食べていたようです。『うなぎ』には豊富なたんぱく質、ビタミンA、B1、B2、E、いま話題のDHA・EPA、胃の粘膜を保護するムチンなどが入っています。
他に『う』のつく食べ物としては『梅干し』。『梅干し』には疲労回復に効くクエン酸が入っています。
そして『瓜』。瓜類である『キュウリ』や『スイカ』がありますが、『キュウリ』には食欲増進、利尿効果、体を冷やすなどの効果があり、『スイカ』は水分補給に利尿効果と夏にうってつけ。カリウムに、リコピン、ビタミンB1、B2、C、カルシウム、リン、ミネラル、アルギニンも入っています。
そして江戸っ子の夏の飲み物は『甘酒』。『甘酒』にはたくさんの酵素とビタミンB1、B12、B6をはじめ他にも栄養成分豊富。現代でも「飲む点滴」とさえ言われているのです。
昔の人は夏バテに効く食べ物を体験から知っていたのですね。
●夏バテ防止食はうつにも効果あり
現在、夏バテに効果があるとされる栄養素は、『たんぱく質』『ビタミンB1』が代表となっています。
江戸時代の人はあまり肉を食べませんでした。ではどこでたんぱく質を補給していたかというと、ほとんどをお米で摂っていたのです。
江戸時代の男性平均身長155センチ、平均体重50キロぐらい。一日に食べるお米は、なんと5合も食べていました。
5合のお米に含まれるたんぱく質は約46グラム。人間に必要なタンパク質が一日1グラムとして、必要摂取量は50数グラムですから、江戸時代の人はたんぱく質のほとんどをご飯から摂取していたのです。
さらに味噌、豆腐といった大豆食品も日常的に食べていましたから、たんぱく質は足りていたようです。しかし、郊外の人はともかく江戸のような大都会では、精米したお米は胚芽という、ビタミンB群がたくさんの部分を取ってしまうので、江戸ではビタミンB1欠乏症である脚気にかかる人が多かったとか。
さてここで前述した『うなぎ』の栄養素を思い出してください。たんぱく質にビタミンB1、B2が入っていましたよね。スイカや甘酒にもビタミンB群が入っていました。
実はこの『たんぱく質』と『ビタミンB群』、現代の国民病とさえ言われているうつ病の予防効果があると言われているのです。
ちなみに栄養ドリンクには必ずビタミンB群が入っています。それだけ疲労回復の効果が期待できるからです。
夏バテとうつ病の共通点は、食欲不振、不眠、体がだるくやる気がでないなどですが、気分の落ち込みなどがあれば、夏バテ以上にうつを考えた方がいいかも知れません。
またそうならないためにも、アイスキャンディーや清涼飲料水は避け、脳内物質を作るたんぱく質(肉、魚、玉子、大豆食品)やビタミンB群を含む食べ物(豚肉、うなぎ、ナッツ類、バナナ)などを取るようにしたいですね。
夏バテもうつ病も元気がなくなる病気です。バランスよくモリモリ食べて元気に夏を乗り越えたいですね。
(食文化研究家:巨椋修(おぐらおさむ))2017-08