(絵:そねたあゆみ)
●即席めん作りに没頭
インスタントラーメン(即席めん)を発明し、世界の食文化に大きな影響を与えた男、安藤百福さん。その人生は波乱万丈そのもの。20代で事業で大成功、日本有数の富豪にまで登りつめます。
しかし、太平洋戦争中、軍用飛行機のエンジン製作に乗り出し、支給の物資横流しの嫌疑を受けて、拘留、死の一歩手前までの拷問を受けたかと思うと、戦後はGHQに不動産の没収。
さらに新設の信用組合の理事長を任されるも、その信用組合が破たん、百福さん全財産を失ってしまいます。
このとき百福さん47歳。実はこのときからなのです。百福さんがインスタントラーメンの研究開発を行うのは。
百福さんは自宅に小さな小屋を建てました。そこが世界初のインスタントラーメンを開発研究する場所となりました。
なぜ他の食べ物ではなくラーメンだったのでしょうか? 実は百福さん、以前にウシやブタの骨から作ったエキスを製造したこともあったのです。それは戦後の日本人が飢えと戦っていたころ、食べ物や栄養の大切さを思い知ったからでした。
このエキスは厚生省(現厚生労働省)にも認可された優秀なものだったといいます。
さらに戦後、日本中が飢えていた時代、庶民は闇市の屋台で並んでまでラーメンを食べていたの見て強く印象に残ったといいます。当の百福さんも大のラーメン好き。お腹を空かせた日本人に、美味しいものを食べてもらいたいという気持ちがインスタントラーメンを作ろうという原動力でした。
百福さんは、インスタントラーメンの定義を・飽きの来ない味・常備できる保存性・手間いらず・安価・安全かつ衛生的
と決めました。それともう一つ。これは百福さんがこれまで、数々の実業で成功してきた事業家ならではのアイディアなのですが、それが「食品の工業化」でした。つまり工場で食品を大量生産するということです。機械で食品を作ることで、食品の品質が一定になり、大量生産することで値段を安く抑えることができます。(次号につづく)
(文:食文化研究家・巨椋修(おぐらおさむ))