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意外と新しいおせち料理という伝統

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(絵:吉田たつちか)

 明けましておめでとうございます。
 みなさんはおせち料理を食べますか? かまぼこで有名な『紀文』が2018年におこなった「紀文・お正月全国調査」によると、お正月におせち料理を食べた人の割合は全体の76.1%だったそうです。
 お正月料理の定番といえば、重箱に詰められたおせち料理ですが、これって日本の伝統とか言われていますけど、その歴史は案外新しいものなんです。おせちを漢字で書くと、「御節」。1月7日の七草、3月3日のひな祭りや端午(たんご)の節句、七夕まつりなどの節句に出された宮中の料理だったのです。
 それが江戸時代に庶民にも広まったとされています。江戸時代の後期になると、重箱に入れるようになったとか。重箱は元々、お弁当箱やお菓子を入れる容器だったのが、やはり江戸時代にいろいろなご馳走を入れるようになりました。
 当然、おせち料理を重箱に入れることもあったようですが、「重箱=おせち料理」となったのは、比較的最近のこと。それも、終戦後、百貨店のキャンペーンからなのです。「おせち」という名称もそのキャンペーンから広まりました。それまでは「蓬莱」とか「食積(くいつみ)」などと呼ばれていました。
 「恵方巻」も、コンビニの「セブンイレブン」の商法から全国的に広まったもの。クリスマスケーキは不二家の考案。クリスマスにフライドチキンを食べるようになったのもKFC(ケンタッキー・フライド・チキン)の戦略と、近代略と、近代や現代の食文化は、意外とどこかの株式会社の商法に乗っかって生まれたものが多いんです。そもそもクリスマスを祝う習慣って、キリスト教徒が全国民の1%しかいない日本にはありませんでしたし。
 江戸時代、お正月におせち料理という考え方はなく、お正月やお盆、節句のお祭りに来客などにふるまう「煮しめ」が、おせち料理の原点。明治大正のころに、数の子や煮豆、昆布巻き、たたきごぼうが使われるようになります。
 それでも地方によって食材はバラバラ。全国的に現在のかたちに統一されるのは、やはり百貨店などの売り出しや、婦人雑誌やテレビで作り方が紹介されるようになってからです。おせち料理の伝統といっても、実質は戦後、それもテレビ等が普及するようになってからと考えると、案外浅いものなのですね。
 そしてよくいわれる「おせち料理は女性も、お正月にのんびりしてもらうためにできた」という説がありますが、どうもこれも疑わしいのです。だって、おせち料理って、作るとなるとすごく大変。お正月の三が日ずっとおせちってわけもいかず、結局何かを作ることになりますしね。
 みなさんは次のお正月に、おせちを作りますか? それとも買いますか? どちらにせよ、よいお正月を。

(食文化研究家:巨椋修(おぐらおさむ))2022-01

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