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政治・宗教・野球

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(絵:吉田たつちか)

 前首相の国葬と宗教団体がらみでの話題で、連日、テレビのワイドショーが盛り上がっている。コロナ騒動が下火になりつつある中での新たな話題の登場で喜んでいるマスコミも少なくない。 一つの話題で連日、視聴者を飽きさせずにテレビの前に釘付けさせる努力とその技量は立派なものではある。登場するコメンテーターも手を変え品を変えて連日、同じ話題にコメントできるものだと感心する。このように制作費がそれほどかからずに視聴率が稼げる手法は、まるで、ロングランミュージカルが聴衆を魅了してやまないようなかんがある。
 個人的には、宗教に政治があまり深く介入するのは、歴史的に見ても、いかがとの思いはある。遺言で全ての財産を教会に寄贈するのは珍しくないし、宗教を信じることも含め、精神の自由は人間の尊厳を支える基本的条件であると同時に民主主義存立の不可欠の前提だ。信教の自由、学問の自由、表現の自由等に、浅薄な小生の知識でこれ以上言及するのは遠慮したい。
 飲み屋での会話でタブーとされるのは、政治関係、宗教関係、野球関係の3つだと長年いわれてきた。それぞれの当事者が一家言をもっている話題のため、酒が入っている中で議論が深まると収集がつかないか、殴り合いの喧嘩が始まるおそれもあるので、お店のママもあえて話題に参入しないし、うまく話題をそらす涙ぐましい努力をしている。酔人の与太話をうまくかわすのもプロの腕ではある。
 最近、某有名俳優がホステスに狼藉して全てのCMをおろされたニュースも話題になっているが、コンプライアンス(法律や条例だけでなく、社会的規範や企業倫理、社内規定、就業規則などの幅広い規則を守る)とかが幅をきかせており、遊びづらい世の中になったものだ。
 ちなみに、前述の3つもタブーのうち、野球は影が薄くなってる。これに変わるものは病気の話題かもしれない。特に、高齢者の集まる飲み屋では病気の話題はいつも共通のテーマであり、誰でも参加でき、話も尽きない。でも、病気の話題しか持ちネタがないのもどこか寂しい気がする。時には口角泡を飛ばすような議論や喧嘩ができる元気がほしいものだ。

(ジャーナリスト 井上勝彦)2022-10

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