寒さの厳しいこの時期、鍋料理をつつく機会も多いのではないでしょうか。今回は、鍋料理には付き物の白菜の栄養成分について紹介します。
白菜は、大根やキャベツなどと同様にアブラナ科植物に属します。英語で“Chinese cabbage”と呼ばれるように中国原産です。日本で本格的に栽培されるようになったのは、明治になってからと言われています。日本の食生活にすっかり 溶け込んでいて古くからの伝統食のように思われがちな食材ですが、比較的新顔の食材なのです。
白菜に含まれる主な栄養成分としては、食物繊維、ビタミンCカリウム、カルシウムなどが挙げられる他、アブラナ科植物に特有のイソチオシアネートという抗がん物質を含んでいます。
実は、白菜を始めとするアブラナ科植物には、このイソチオシアネートの他にもグルコブラシシンと呼ばれる抗癌物質が含まれています。グルコブラシシンその ものは、抗癌物質ではありませんが、食事から摂取されると体内でインドール-3-カルビノールやジインドリルメタンという優れた抗癌作用を持つ成分に変化 します。インドール-3-カルビノールやジインドリルメタンは、乳がんや前立腺がん細胞など多くのがん細胞の増殖を抑える他、がん細胞を直接的に殺す作用 を持っています。この作用はアポトーシス(細胞死)と呼ばれる現象として知られています。
オタマジャクシが成長してカエルになるとき自然と尾が消えてなくなるように、各細胞には不用になると自爆死するスイッチのようなものが備わっていると考えられています。インドール-3-カルビノールやジイ ンドリルメタンのような物質は、アポトーシスを引き起こすスイッチをオンにする作用があるものと解釈されています。白菜は、かなり地味な野菜ですが、意外と働き者なのです。
(医学博士 食品保健指導士 中本屋 幸永/絵:吉田たつちか)2011.01