冬至も過ぎ、昼間の時間が徐々に長くなって行きますが、寒さはこれからが本番です。そして、この厳寒期に旬を迎えるのがナマコです。漢方では薬用人参に匹敵する滋養強壮効果があると期待されていて、干しナマコは別名海参とも呼ばれています。今回はナマコの効用について紹介したいと思います。
ナマコは、カルシウム、マグネシウム、亜鉛といったミネラル類の他、ビタミンB群やビタミンEなどを豊富にバランスよく含んでいます。さらに、何といっても滋養強壮効果の高いタウリンを多量に含んでいるのが特長です。また、肌や関節によいとされているコラーゲンやコンドロイチンも多く含まれています。
その他のナマコの栄養学的な特徴として、サポニンと呼ばれる成分を含んでいることが挙げられます。サポニンは薬用人参の有効成分として知られている他、植物界には広く分布する成分ですが、動物界ではナマコ以外にヒトデや海綿などわずかな例が確認されているだけです。サポニンは、油を溶かす作用(界面活性作用)があることから、ナマコは食用だけでなく石鹸などにも利用されています。また、サポニンには細菌などの細胞膜を破壊することによる殺菌効果もあります。
実際にナマコのホロトキシンと呼ばれるサポニン成分は水虫の原因となる白癬菌を殺す作用があるので水虫の外用薬として実用化されています。
中国では主として干しナマコが利用されますが、日本では生のまま酢の物としていただくのが一般的なようです。酢の物にする際には、身を柔らかくするために熱湯をくぐらせる「湯通し」がよく行われますが、湯の代わりに番茶を使う「茶ぶり」を行うと生臭さもとれて一石二鳥です。地味な食品ですが、意外と優れものの食品です。
(文;医学博士 食品保健指導士 中本屋幸永/絵:吉田たつちか)2010.02