2005年冬から2006年春にかけて日本では、近年みられない低温が続きました。気象庁ではこれを「ラ・ニーニャ」のせいだと報道発表しています。(この現象は夏には終息する予測も出されています)
「ラ・ニーニャ」とは、赤道上空を吹く偏東風が強まるために南米ベルー沖赤道太平洋の海水温が例年より2℃~5℃低くなることをいいます。
そのせいで、赤道海域の高温域は例年より西に寄って、偏東風が直接吹き付けている地域だけでなく、世界中に異常気象をもたらすものです。
この逆の現象が、比較的よく知られている「エル・ニーニョ」です。これは偏東風が弱まるためにペルー沖の海底からの冷水の湧き出しが少なくなり、赤道海域の高温域が例年より東によって、やはり世界中に異常気象をもたらします。
ところで。「エル・ニーニョ」とはスペイン語で「男の子」のいう意味です。実はこの現象は十二月ごろに始まり、そのおかげでペルー沖のアンチョビ漁が豊漁になります。それがちょうどクリスマスのころに近いので、地元の人々はこれを神さまの恵み、「神の子」つまり「エル・ニーニョ」と呼ぶようになったり、逆の現象を「ラ・ニーニャ」つまり「女の子」と呼ぶようになったのです。
これらの現象は、昔から数年ごとに繰り返されてきた自然のサイクルなので、異常気象と言っても昨今の人為的なものとは種類が異なります。
それに、この現象が研究の対象とされ始めたのはまだここ数十年の話です。だから「エル・ニーニョだから今年は絶対に暑い」などと断言できる人はまだ一人もいないのが実情です。
地球も生き物です。熱が上がったり下がったりするときもあるのです。そう思って暖かく見守ろうではありませんか。
(文:気象予報士 チャーリー/絵:吉田たつちか)2006-06