女子サッカー、なでしこジャパンの快進撃は記憶に新しいところ。FIFAワールドカップドイツ大会の優勝は日本中が歓喜に沸きました。
この、なでしこジャパンというネーミングは、2004年に一般公募から選ばれました。可憐で芯の強い日本女性を意味する大和なでしこ。その大和をジャパンに変換し、世界に羽ばたき世界に通用するようにと願いを込めてつけられました。その願いが2011年に実現したのですから素晴らしい限りです。
今や『なでしこ』という言葉を知らない人はいませんが、意外にも『なでしこ』がどんな花か知らない人は多いようです。秋の七草のひとつで、背丈は低く、ピンク色の花びらの先端が細く裂けているのが特徴。
昔は河原によく咲いていましたが、時代の流れと共にめっきり見かけなくなりました。今では花屋でポットに入って売られているのを見かけるくらいですが、なでしこの小さな花びらは薔薇やガーベラのような華やかさがないので、パッと目につかないのかもしれませんね。
しかし、平安時代に中国からもたらされた時には誰もが知る花でした。なでるようにかわいい花なので『なでしこ』と呼ばれるようになりました。そのせいか、なでしこという言葉が子供や女性を比喩するようになり、万葉集では大伴家持が「なでしこがその花にもが朝な朝な 手に取り持ちて恋ひぬ日なけむ(あなたがなでしこの花だったら、毎朝手に取って愛することができるのに)」と、恋の和歌になでしこを用いて表現しています。清少納言も枕草子のなかで「草の花はなでしこ」と記述しています。江戸時代には小林一茶が「お地蔵や 花なでしこの 真中に」と俳句を読みました。このように、昔はなでしこと聞けば誰もがイメージが浮かび上がる花だったのです。
ますます脚光を浴びる、なでしこジャパン。それと比例して、なでしこの花も日本国民に愛され、再び日本のあちこちで見かけるようになるといいですね。
(コラムニスト 華山 姜純/絵:そねたあゆみ)2011-10