12月の夜空で、「W」の形をしたアンドロメダ座の南に、3個の星が「へ」の字を描いているのを見つけることができます。これが今回のお話、おひつじ座の目印です。おひつじ座は、お誕生日の12個の星座にも含まれているので、名前はよく知られていると思います。
この星座は、古代バビロニアでは、比較的明るい右側の、「へ」の字の部分を、麦を播く農繁期に雇われる「農夫」に見立てました。そしてそれに続く、隣にあるうお座の中心部が、「農夫」たちの耕す農地と解釈していましたが、当時は「農夫」につながる「男」ということばの発音と、「羊」の発音とが同じだったために、のちにこの星座は「おひつじ座」と呼ばれるように定着しました。
またギリシア神話では、テッサリアの国王、アタマースは、テーベ国の王女イーノーと再婚をしました。このイーノーはとても意地悪な女でした。アタマースの連れ子であった息子プリクソスと双子の妹ヘレを、殺す計画を立てたのです。
イーノーは、麦畑に種を播く前の夜、全ての種に火をつけて燃やしてしまいました。その年、この国では麦が獲れなくなります。イーノーは自ら、
「これは何か悪いことの前触れに違いない」と大騒ぎをしました。
そして、イーノーは、前もって打ち合わせをしていた占い師の元を訪れて、
「この国は神々の怒りを買っている。それを抑えるためには、プリクソスとヘレを、大神ゼウスへのいけにえにするしかない」という、偽のお告げを国王アタマースに告げます。
アタマースは心を痛めながらも、お告げのとおり、いとしい双子をゼウスに捧げることにします。
一方で、そのことを聞きつけたゼウスは、双子がいまにも神殿で殺されようとしているところへ、空飛ぶ金色の羊を遣わします。羊は2人を背中に乗せ、その場から飛び去りました。妹のヘレは途中で海に落ち、死んでしまいましたが、兄のプリクソスは無事にコルキス国にたどり着き、その国の王女と結婚しました。プリクソスは自分を救ってくれたお礼として、その羊の皮を天に捧げました。
これが「おひつじ座」として天に昇ったとされています。 (コラムニスト 気象予報士 チャーリー/絵:そねたあゆみ)