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「サザエさん」誕生秘話

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(文:小説家 池田平太郎/絵:そねたあゆみ)2017-2

 ご長寿テレビアニメで知られる「サザエさん」は原作者である長谷川町子女史が、終戦直後の昭和21年(1946年)、福岡市の自宅近くの百道海岸を眺めていて、登場人物の名前や家族構成を思いついた・・・とされています。(百道海岸というところは、私が生まれた頃までは福岡市で一番人気の海水浴場でしたが、物心ついた頃にはすでに大腸菌が繁殖しすぎて遊泳禁止になっており、さらに、昭和の終わり頃からは埋め立てられて、現在、福岡ドームや福岡タワーなどが建つ地域となっています。ちなみに、終戦直後、この辺の石垣が崩れ、中から大量の人骨が見つかったことがあったらしく、皆、太平洋戦争の犠牲者か・・・と思っていたら、「元寇」だったとか。)

 ところで、なぜか拙宅に「磯野家の謎」という本があり、それによると、サザエさんは大正11年生まれで、夫のマスオさんは大正6年生まれ。つまり、マスオさんは、太平洋戦争を経験しているんですね。もっとも、彼は早稲田大学卒(そういえば、良家の坊っちゃんぽい雰囲気が(笑)。)だそうですから、当時は、兵役法などの規定により旧制の大学・高等学校・専門学校などの学生は26歳まで徴兵を猶予されており、おそらく、徴兵されたとすれば戦局が悪化し始めていた昭和18年・・・。

 この点で、マスオさんと同年の大卒の有名人には作家、柴田錬三郎翁がおり、(もっとも、こちらは早生まれなので学年は一つ上だったようですが)翁は昭和17年に召集され、衛生兵として、三年間の内地勤務の後、敗色濃厚となった昭和20年、南方へ派遣。その途中、敵の攻撃に遭って乗艦が撃沈し、7時間、海の上を漂流し続けた後、奇跡的に救助されたと。(漂流中はひたすら北宋の漢詩を詠じていたとか。こういう壮絶な体験をしたからか、賭け事は抜群に強かったと。)

 ただ、翁がマスオさんと違うのは戦前に既に結婚していたことで、当時はいつまで生きられるかわからないご時世。出征前に結婚するのが普通で、なぜ、マスオさんが戦後まで独身だったのかはわかりません。(事実、帰国してみれば自分は戦死したことになっており、妻は既に別の男性と再婚していた・・・などという、様々な悲喜劇があったようです。)

 ちなみに、二人は福岡天神のデパートの食堂で見合いして結婚に至っておりますが、混雑した食堂内で離れ離れの席に座ることになってしまい、事情を知った他の客が気を利かせて席替えをしてくれたものの、衆人環視の下でのお見合いとなったことから、早々に結婚を決めたとか。

(小説家 池田平太郎/絵:そねたあゆみ)

 

 

 

 

 

 

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