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『鶴の恩返し』に見る外国との付き合い方

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(絵:吉田たつちか)

 昔話『鶴の恩返し』は日本で知らない人はいないほど有名なお話です。実はこの『鶴の恩返し』、元は中国で唐の時代に誕生したといわれています。ですから、唐と交流のあった東アジアや東南アジアの国では、類似した昔話が残っているのです。とはいっても、登場する鶴は日本でお馴染みのタンチョウヅルでなく、マナヅルであることが多いようです。
 いずれの国での『鶴の恩返し』もストーリー展開はほぼ同じです。助けてくれた恩返しに女性の姿となり機を織ります。その織る姿は「見ないでほしい」とお願いし、約束が破られた時に飛んで帰ってしまうのも同じです。
 ただ、外国の場合「恩返し」というよりも「褒美」という意味合いが強いため、日本人から見ると違和感があるかも知れません。鶴を助けた「褒美」に機を織り、約束を破った「罰」として飛んで帰る。日本の場合は神道の影響なのでしょう、鶴と人間は同じ目線です。鶴は超能力を持っていますが、それがあるからといって上から目線で「褒美」を与えたり「罰」を与えたりしません。私たち人間と同じ仲間として行動を取ります。
 この違いを理解していなければ、外国人と本当の意味で仲良くはなれないでしょう。日本では明確な身分差や棲み分けといったものがありません。人間も神も動物も同じ世界に存在します。島国であり自然災害が多い点が、この思想を生んだのでしょう。一致団結しないと、狭い土地で生きていけませんでした。
 一方、海外の場合は大陸です。自然災害が起きたとしても、隣の土地に移動することが日本よりも容易ですよね。これが争いを生み、人間関係も内と外と分けなければならない状況になりました。神を含め外の世界は奪うか奪われるかの二択なのです。時折、外国人による犯罪で耳をふさぎたくなるような凶悪な事件がありますが、これも内と外との対応の違いです。内の人間相手なら、ここまで凶悪なことはしません。
 日本が良いか外国が良いかは、それぞれの土地で生まれ育ったかで考えは変わってきます。物事を良し悪しで考えるのではなく、そのような考えがあることを知ることが大切です。違うと知る事から始めないと、受け入れることも拒絶することもできません。インターネットの発展で、思想の交流も外国の方とする機会が増えました。どう付き合うかを考える上で、『鶴の恩返し』は参考になるかも知れません。
(コラムニスト ふじかわ陽子)2020-12

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