(絵:吉田たつちか)
笑いが免疫力を高めることは昔から知られていた。「笑いは副作用のない妙薬」とか「笑う門には福来る」とも言われている。
笑うと、免疫のコントロール機能をつかさどっている間脳に興奮が伝わり、情報伝達物質の善玉ペプチドが大量に分泌され、血液やリンパ液に乗って全身に運ばれ、NK細胞の表面に付着し、活性化する。その結果、ウイルスやがん細胞やなどを攻撃するので、免疫力が高まるのだという。
東京都がコロナ対策で緊急事態宣言を延長したのを受けて鈴本演芸場が5月上席昼の部・夜の部をYou Tube上でインターネットで無料生配信した。
無観客での配信では、マクラも使えず演者もやりにくかったに違いないが、寄席そのままの配信で十分に堪能できた。
普段、寄席では前もって演目が発表されておらず、落語家はマクラで観客の反応をさぐり、本題に引き込むのが一般的だ。また、寄席では、漫才、奇術、紙切りなど落語以外の出し物を色物といい、長時間座っていても飽きがこない仕組みになっている。
東京に出ると、なるべく寄席に寄ることにしている。今回のネット配信では「芸人応援チケット」を設定したのもグットアイデアだ。『芸人応援チケット』は1枚千円。この売り上げは今回の生配信出演料に充てるという。鈴本演芸場再開後にこのチケットを持参すると入場料金が五百円引きになる。今回のYou Tube公開では10万人以上の視聴が記録され、まずまずの成功といえよう。コロナ後の世の中で、今後も生配信していただけると田舎暮らし中の小生にとって嬉しいが、やはり、演者と観客が一体となった生の雰囲気こそが寄席の醍醐味ではある。
今回の鈴本演芸場のチャレンジは多分に、政府や東京都に対しての皮肉や洒落も込められているようで、小気味が良い。
やれ3密だ手洗いだと防御だけが声高に叫ばれているが、免疫力を上げるというコロナに対する攻撃はもっと大切である。現に、今回のコロナで被害が大きいのは免疫力の衰えた高齢者や基礎疾患のある方であることを見ても、笑を提供する場は不要不急の場ではない
(ジャーナリスト 井上勝彦)2021-06