●廃れつつある和食
2013年12月、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界無形文化財として、日本の食文化である『和食』が登録されました。
なぜこの和食が世界無形文化遺産になったかというと、単純に和食は素晴らしいというだけではなく「このままでは、和食は廃れてしまう」「保護しなければいけない」と思う人がたくさんいたから世界無形文化遺産などという仰々しいものに登録されたわけです。
また和食の特徴としては、各地の食材や素材を生かす調理技術や道具を使うこと。
一汁三菜を基本とするスタイルは栄養バランスに優れており、「うま味」を上手に使うことによって動物性油脂の少ない食生活を実現し、日本人の長寿、肥満防止に役立っていること。
四季折々の自然を料理や器で表現したり、年中行事との関係や、家族と食事を共にすることで、家族や仲間との絆を強めてきたことなどがあり、これらの特徴も、文化財になった理由の一つだといいます。
●ラーメンやカレーは和食なの?
わたしたちは和食と聞くとどんな料理を想像するでしょうか?
旅館や料亭で食べるような懐石料理でしょうか?
外国人にも人気のスシ、テンプラ、スキヤキでしょうか?
もちろん懐石料理もスシ、テンプラ、スキヤキといった料理は和食の一つです。
では、ラーメンやカレーライスといった外国から入ってきた料理、いわゆる洋食は和食に入るのでしょうか?
さて、皆さんはどう思います?
答えは、【もしここでいう和食が、ユネスコの世界無形文化遺産に登録された「和食」であるとすれば、よくわからないけど、たぶん和食に入れてもいいと思う】です。
ハッキリしなくてすみません。実は世界無形文化遺産の和食には、ハッキリとした定義がないんです。
そしていわゆる洋食というのは、明治以降外国から入ってきた料理や食べ物。これら洋食たちは、いまやれっきとした日本の生まれの料理といっていいでしょう。日本生まれの日本の料理なら、和食といっていいのではないでしょうか?
ただ、やはり日常の使い方としては、和食に対する洋食というのが、まだまだ一般的であるとは思うのですが。
●外国人が一番好きな外国料理は和食
2012年、日本貿易振興機構が、中国、香港、台湾、韓国、フランス、イタリア、アメリカの7か国に住む外国人たちに「自分の国の料理以外で一番好きな料理はなんですか?」という調査をしました。
1位日本料理、2位中国料理、3位フランス料理という結果でした。
それも、7か国中、アメリカを除く6か国の人たちが、日本料理つまり和食を1位としているほど、圧倒的人気だったのです。日本人はもっと日本の料理、和食を大切にしないといけませんね。
●海外で急増する日本料理店
当然、世界中で日本料理店が急増中! どれくらい増えているかですって?
外務省と農林水産省が調べたところ2006年で約2万4000店だったのが、2010年だと約3万店。2013年3月の時点で5万5000店と、凄い勢いで増えているんです。
日本料理店が多い地域は、アジアが一番多くて、約2万7000店、次がアメリカで約1万7000店。3番目が欧州で5,500店とのこと。
海外での和食のイメージは、ヘルシー志向やダイエット志向で、和食はヘルシーというイメージが強く、見た目が美しいという意見や、日本の食べ物は安心で安全、そして高級というイメージも強いようです。
ただちょっと残念なのは、和食の知識がないアジア人が「日本料理店をやれば儲かる」とばかりに、トンデモない和食を提供したりすることも多いようです。それがその土地に合った美味しいものであれば、和食から派生した新しい料理ということができるのでしょうが、そうでない場合、これはちょっと困ったものですね。
和食がユネスコの世界無形文化財に認定されたということは、日本の料理が世界に誇る文化であることが証明ということ。何とか大切にしていきたいものです。
(文:食文化研究家 巨椋修(おぐらおさむ))2015-03