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独楽吟と車輪吟

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(絵:そねたあゆみ)

 ボケ防止には俳句や狂歌、和歌などを吟ずるのが良いようだ。紙と鉛筆があればいいので、金もかからない。
 幕末、福井の歌人橘曙覧の短歌集「独楽吟」が注目されている。
これは、「たのしみは~時」の形で詠まれた52首の連作の短歌で、まるで独楽(こま)を回しながら遊ぶように彼の楽しみが詠み込まれていることから「独楽吟」という。
 貧くも、日常の些細な出来事に楽しみを求め、その喜びを感動的に詠み上げているのが、現代の人々にも共感を呼んでいるのだ。52種の中で小生が好きなのは
①妻子睦まじくうち集い頭ならべて物をくふ時②心にうかぶはかなごと思ひ続けて煙草吸ふ時③常に見なれぬ鳥の來て軒遠からぬ樹に鳴し時④心をおかぬ友どちと笑ひかたりて腹をよるとき⑤晝寝せしまに庭ぬらしふりたる雨をさめてしる時⑥庭にうゑたる春秋の花のさかりにあへる時ーーーーーーなど。
 これに倣って小生も詠んでみた。
・たのしみは種蒔かぬのに朝顔の芽を見つけし時・たのしみは場末の店で美人女将と残る時
 福井市では、貧しさの中にあっても心豊かに生きていた曙覧の世界に学び、生活の中で感じた身近な楽しみを詠んだ歌(「たのしみは・・・」で始まり「・・・とき」で終わる短歌)を「平成独楽吟」として募集している。(第22回の募集は終了。今年度は(23回)は10月に募集開始の予定。
 平成六年に、天皇皇后両陛下が訪米された際、当時のクリントン大統領が歓迎スピーチの締めくくりに『独楽吟』の「たのしみは朝おきいでて昨日まで無かりし花の咲ける見る時」を引用して、「日米両国民の友好の心の中に、一日一日新たな日とともに、確実に新しい花が咲くことを期待する」と述べたことから、再び脚光を浴びた。
 「たのしみは」の代わりに「うれしきは」とした連作もいいかも。独楽は若者には縁遠いので「車輪吟」としたらいかがでしょうか。
・うれしきは今日も元気に友と語りて酒飲む時・うれしきは杖打ち捨ててカメラ片手に歩く時
 (ジャーナリスト 井上勝彦)2017-05

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