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『古事記』の神々(その11)

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(絵:そねたあゆみ) 

 前々回は、天の安の川(あめのやすのかわ)を挟んで、天照大神(あまてらすおおみかみ)と速須佐之男命(はやすさのおのみこと)の姉弟が、対峙する場面までを描きました。今回はそのつづきです。
 速須佐之男命は天照大神に、「わたしの忠誠心が明らかだから、わたしが生んだ子はしなやかで美しい女の子ばかりなのです」と、勝利を宣言します。そして、姉の領地にある水田の畦を壊し、その溝を土で埋め、新しく収穫した穀物を納めている蔵で、排便をするなどの悪さをしました。天照大神はそれを見ても叱らず、静かに、「あなたはわたしの弟、好きなようにしなさい」と言いました。それでも弟のいたずらがあまりに果てしなくつづくので、天照大神は悲しみのあまりその様子を見ていられなくなって、ついに天の石屋戸(あめのいわやと)をひらき、そこに閉じこもってしまわれました。すると、高天の原(たかまのはら)はもちろんのこと、葦原中つ国(あしはらなかつくに)にも陽の光が射さず、何日も夜ばかりがつづきました。
 多くの神々が天の安の河原に集まり、相談をしました。さまざまな神々が珍しいものをいろいろな人間につくらせ、天宇受賣命(あめのうずめのみこと)が、天の香具山のコケをたすきに掛け、同じく天の香具山で採れた蔓を手にゆるく束ねて持ち、天の岩屋戸に空っぽの壺を逆さに置いて足踏みをすると、地面はぐらぐらとゆれました。天宇受賣命は取り憑かれたように、衣類をはだけて乳房を見せ、服を縛っていた腰ひもを、女性の陰部へ少し入れ、まるで犬のしっぽのように腰ひもを垂らしました。その様子のおかしさに、八百万の神々は、地面をゆるがして大きな笑い声を上げました。
 岩戸に閉じこもっていた天照大神は、外で一体何が起きているのだろうと気になりました。扉を細めにひらき外の様子を眺め、少しずつ岩戸から出て行きました。
 そうして天照大神が現われたことで、高天の原も、葦原中つ国も、自然と光が射し始めました。
 神々は速須佐之男命のひげを剃り、手足の爪まで抜いて、神々の世界から追い出されました。(つづく)
(コラムニスト 気象予報士 CHARLIE)2018-04

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