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『猿蟹合戦』に見る真のチームワークとは

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(絵:吉田たつちか)

 乱暴者の猿が蟹から柿を奪い、ついには命まで奪ってしまう。そして蟹の子供たちが仇討ちを行う。これは昔話『猿蟹合戦』です。日本人なら知らない人はいない有名なお話です。勧善懲悪の仇討ちモノとして、長い間愛されています。蟹の子供たちと一緒に仇討ちをするいわゆる「助太刀」は、地方や時代によって違いますが、大まかな筋は変わりません。
 この『猿蟹合戦』は、チームワークを学ぶ教材としても優れたお話です。必勝の秘訣が詰まっています。まず、最終目的の設定です。この場合は蟹の親の命を奪われたのですから、それと同等のことを猿に行うことが最終目的です。
 そのためにできることを、蟹の子供たちは着々と行いました。最初に行ったのは、猿の悪行を言いふらすことです。情報宣伝ですね。親の仇ですから、感情的で構いません。やられたことを滔々と語ることで、同情し助太刀もしてくれる人を見つけます。理不尽に怒る人は案外多いもので、現在でもSNSでの炎上も同情からの怒りで起こることが多いですよね。
 このように周囲を扇動することが、実はチームワークを整えるのに大切なことなのです。目的を同じくする人が集まりやすいからです。例えば現代なら、草野球チームのメンバーを集めるとします。この時に「○○というチームに必ず勝ちたい!」といった感情的な目的を周囲に伝えるだけで、賛同してくれる人が集まる可能性が出てくるのです。何もしないなら、人は集まることなどありません。言葉にしなければ、何もないと同じですから。
 人が集まってきたら、今度はその人達の能力に合った配置を考えます。『猿蟹合戦』でも重たい臼は天井から落ちてくる蜂は刺すといったように、それぞれの能力に合わせた配置で猿を追いつめていきます。これがもし臼に刺すことを命じたとしたら、蟹の子供たちは本懐を果たせなかったでしょう。これもチームワークを整えるのに必要なことです。人間はそれぞれ持っている能力が違います。個性も違いますから、それを見極めてこそお互いを尊重して行動をとることができるのです。
 能力を考えなかった場合、ミスが増え、チーム内の雰囲気がギクシャクしたものになるでしょう。失敗したことを責めないにしろ、時間のロスができてしまいますから。これを避けるためにも、能力は見極めたいものです。
 あなたがもしチームワークで悩んでいるなら、同じチームの人と『猿蟹合戦』について感想を言い合ってみるのも手ですよ。(コラムニスト ふじかわ陽子)

(コラムニスト ふじかわ陽子)2020-10

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