今年の冬は野菜の値段が高騰している。冬の鍋物に不可欠な白菜も4分の1、6分の1カットで売られている。
老夫婦にとっては、ちょうどいいサイズではあるものの今年は、恒例の白菜漬けも無しだ。
「リボべジ(リボーンベジタブル)」、つまり再生栽培という言葉を耳にしたことはあるだろうか。野菜の根や切れ端を水や土で育て直し、再び食材として活用する取り組みのことである。これまで捨てられていた部分が、新しい命を得るという点で、環境負荷を減らしながら食を楽しむ一つの方法として注目されている。
STAP細胞をめぐる小保方晴子さんの話題は世の中を騒がせたが、動物にくらべ植物の再生能力は高い。
ネギは泥つきのものを買い、根元を数センチ残して植木鉢に培養土を入れ挿しておけば、新しい芽が伸びてくる。ワケギも再生力が旺盛だ。小松菜もまた、再生力の大きい野菜だ。根元を残して切りビニール袋に入れて冷凍すると、みそ汁の具などとしていつでも使える。残った根元を土に挿せば、ほどなく芽が出て葉が茂る。
ニンジンのヘタも同じように水につけることで葉が育ち、料理の彩りや薬味として利用できる。レタスやキャベツの芯も、うまくいけば再び葉をつけることがある。韮は特に再生力が強く、数10株植えておいて、葉だけ切って使えば、すぐに伸びて再び使うことができる。しかも、何度でも再生する便利な野菜だ。
再生栽培の魅力は、その手軽さにある。特別な道具や広いスペースがなくても、キッチンの片隅や窓辺で簡単に始められる。小さなグラスに水を張り、切れ端を置くだけで、数日後には新しい芽が顔を出す。その変化を観察するのも楽しく、子どもと一緒に育てることで食育にもつながる。
また、リボべジは「もったいない精神」にも通じる。普段なら廃棄される部分がもう一度食材として活用できることで、無駄を減らし、食への意識を高める機会にもなる。家庭での小さな実践が積み重なれば、食品ロス削減の一助にもなるかもしれない。
さらに、リボべジを通して「循環」を実感することができる。野菜が再び成長する姿を目にすると、私たちが食べているものが単なる消費物ではなく、生きた生命体であることを再認識できる。スーパーで買った野菜が育ち、再び食卓に戻ってくる。そんな小さなサイクルが、日々の暮らしに新たな気づきをもたらしてくれる。
もちろん、すべての野菜がうまく再生するわけではないし、再生栽培で得られる量は限られている。それでも、ほんの少しでも自分で育てたものを食べる喜びは格別だ。手間をかけずに楽しめるリボべジを、あなたの暮らしの中にも取り入れてみてはいかがだろうか。
(ジャーナリスト 井上勝彦)2025-03