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食文化は損得勘定!?

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15-09-1●人類は生物の中でもっとも贅沢なもの食べている

地球に生きる生命体で、人間ほど多様なものを食べ、それもAという食材という食材をB、C、Dなど複数の食材と合わせたり混ぜたりして食べるという、フクザツな食べ方をする生物は、おそらく人間だけでしょう。
そして現在の人間は、人類発祥以来もっとも贅沢な食事を毎日とっているといって過言ではありません。
例えば、皆さんは今日の朝ごはんはどんなものを食べましたか? 納豆に味噌汁にご飯という質素なもの? その納豆や味噌の原料である大豆は、日本での自給率わずか6%。ほとんどが海を渡ってやってきた舶来品なのです。
え? パンとコーヒーとだけの貧しい食事ですって? パンの日本における生産量は15%。85%はアメリカやカナダ、オーストラリアなどはるばる太平洋を渡ってきて、私たちの口に入るわけです。コーヒーにいたってはブラジルなど地球の裏側からやってきて、私たちの食卓に並ぶことも少なくありません。
皆さんが、質素な食事、貧しい食事と思っているものも、考えてみれば、世界中のありとあらゆるところから、集められてやってきた、ちょっと昔ならまさに山海の珍味であり、舶来品であり、信じられないくらいに贅沢なものであるといえないでしょうか?
これは日本だけではなく、地球に住むほとんどの人類にも言えそうです。人類ほど、地球上のありとあらゆる場所から、食料を集めてきて食べる生き物はいません。

●食文化は損得勘定が決める?

「そんなのは20世紀以降のことでしょう。それ以前のほとんどの人類は、王侯貴族や大富豪以外の人たちは、地元でとれる食べ物を食べて生きていて、そんなに贅沢な生活はしていないと思うのですが?」
と、おっしゃる方もいることでしょう。はい、その通りです。
人類は、特に先進国の人類は、人類誕生以来、もっとも贅沢な食生活をしているといえますが、昔の人たちの食生活は、基本的にとても質素なものでした。
まず、その土地や近くでとれる食料が、あくまで基本的な食材。
贅沢をする以前に、食料の安定供給が大切。誰だって飢えたくはありませんものね。
そのため、人類は各地各地で、自分たちが飢えないよう少しでも楽に生きていけるように食文化を作りあげてきました。

・インド人(ヒンズー教徒)が牛を食べないのは、牛を食べるより生かして、糞を燃料にし、無料の耕耘機がわりに使役したほうがお得。
・アラブ人(イスラム教徒)が豚を食べないのは、水が少ない砂漠では、本来、豊かな水で育った森林に住む豚を飼うより、別の動物を飼育したほうがお得。豚を避けることで、豚による寄生虫や病気も避けられお得。

と、各文化、民族で、いか生き残るのにお得であるかで、違う食文化が育ってきたのです。
当たり前ですが、生き残るのに損になるような食に限らず、基本的にすべての文化において育ちにくいのです。ただし、文化がホンモノになるためには、損になるもの、無駄なもの、必要不可欠ではなく不必要かも知れないものを、ふんだんに蓄え、その不必要かも知れないものを発展発達させなければなりません。
それは美術や芸術、そして美食のような、必ずしも生きるためになくてもいいものを、発展発達させねば真の文化文明とはいえないのです。

●美食は王侯貴族大富豪が発展させてきた

贅沢な美食もまた、生きるのに必ず必要ではないものです。でも、できれば贅沢をして美味しいものを食べたいもの。好きなもの食べられるのは、王侯貴族や大富豪といった支配階級です。
世界的に影響力のある料理、例えば世界5大料理といわれる国々は、どこも大変豊かな国であると同時に王や大富豪が料理を発達させてきました。
世界の美食の頂点といっていいフランスは、ルイ王朝があり、フランス料理に絶大な影響を与えたイタリア料理を支えたのは、イタリアの大富豪メディチ家でした。
アジアだと、タイ王家のタイ国からはタイ料理。
自らを華の中心と考える中華思想を持つ中国も、王朝が宮廷料理を作り贅の限りをつくしました。
一方日本の和食も世界3大料理に入るともいわれていますが……、和食を完成近くまで作り上げたのは江戸時代。
しかし江戸時代を支配していた武士階級は質素倹約が美学ということで、武士階級は、和食に強い影響は与えていないようです。
和食の基本は、江戸時代より前の公家の料理や僧侶の精進料理。それに茶道の懐石料理を経て、庶民の会席料理。さらにいま和食の代表とされる天ぷらや寿司は元々屋台料理。日本料理は世界的にも珍しく庶民が作りあげたものが、大いに採用されています。
それはさておき、世界的に見れば、美食は王侯貴族や大富豪が贅にまかせて、発展させてきたもの。
その集大成を、21世紀日本に住む私たちは、比較的安価に楽しむことができます。特に日本は世界中の料理を楽しむことができる国。思えば、ありがたいことですねえ(笑)

(食文化研究家 巨椋修(おぐらおさむ))

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