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DNA構造の解明とノーベル賞

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1110-4 生物の設計図とも呼ばれるDNAですが、その構造の発見者であるジェームズ・ワトソン、フランシス・クリック、モーリス・ウィルキンはノーベル生理学・医学賞を受賞しました。ノーベル賞といえば研究者にとっては世界的な名誉であるだけでなく、莫大な賞金が贈られることでも有名です。しかし、DNA構造の発見に大きく貢献しながら、その栄誉を逃した悲運の女性がいたことをご存知でしょうか。
その女性の名前はロザリンド・フランクリン。イギリスの物理化学者です。ロザリンドの裕福な両親は、ロザリンドが九歳の頃から寄宿学校に入学させ、可能なかぎり最高の教育を受けさせました。卒業後はケンブリッジ大学で学びましたが、当時のケンブリッジ大学は女性が自由に研究に打ち込める場ではありませんでした。しかしロザリンドは研究にいそしみ、大学をトップクラスで卒業したのです。
フランス留学を経て、ロザリンドはロンドン大学に研究職を得ます。彼女の専門はX線結晶学(結晶にX線を当てて、物質の構造を解明するもの)でした。そして、ここで彼女にあたえられた研究テーマが、X線によるDNA結晶の解析だったのです。ロザリンドは順調に研究を進め、ついにDNAの構造の解明につながるX線写真を撮影しました。しかし、ロザリンドはその成果を公表せず独力で研究を進めます。
そのことが彼女に悲運をもたらしました。ロザリンドは、彼女が着任する以前からDNAを研究していたモーリス・ウィルキンスと研究成果を巡ってしばしば衝突していました。そしてウィルキンスは、ケンブリッジ大学のジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックに、彼女の撮影したX線写真を無断で見せてしまうのです。ワトソンとクリックはロザリンドの研究をもとに、DNAの構造を発見します。
ロザリンドはワトソンらのノーベル賞受賞を前に、卵巣癌と巣状肺炎により若くしてこの世を去ったため、ノーベル賞受賞の栄誉は得られませんでした。ロザリンドは長い間学会で否定的な評価をされてきましたが、それは彼女が女性であったことと無関係ではないようです。近年ようやく彼女の業績が再評価され、死後数十年経ってホロウィッツ賞(有力な生物学・生化学の賞)が遺贈されました。
(現役医大生 朽木誠一郎/絵:吉田あゆみ)2011-10

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