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キャシュレス社会の到来  

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(絵:そねたあゆみ)

 サイフを待たない生活が長い間続いていた。ズボンのポケットに小銭がたまっていくものだから、いつのまにかポケットに穴があいてしまう。小銭は時たま取り出して玄関に置いた小さな紙箱に入れる。こんな生活習慣の者にお金が貯まるはずはないと、家族からは軽蔑の眼で見られていたが、その性分は治らない。

 世の中の趨勢はキャッシュレスだという。時代に乗り遅れまいと、先日購入したスマホに搭載されているWalletというシステムを利用。これに登録すれば、飛行機への登場や映画館への入場、さらにクーポンの引換などが、キャッシュレスで出来るという。

 セミリタイアした今では、飛行機に乗ることもほとんどないし、街には映画館もないので、それほど必要はないが、とりあえずスイカをスマホで使えるようにした。本当に、スマホだけで大丈夫か半信半疑で、まず、コンビニで使ってみた。使えるどころか、使った総額と残高が即座にスマホに表示される便利さに驚く。本来の用途である駅の改札は大丈夫か、宇佐美駅から隣の伊東駅まで乗ってみた。これも当然クリア。

 これまでは、残高が無くなってきたらわざわざ駅まで行ってチャージしていたのだが、これもスマホ内で出来るのでひと手間省けた。

 昔は駅の改札には切符切りがいて、その手さばきの鮮やかさが競われていたもので、鉄道学校でも最初の実技訓練は切符切りだったという。あれほど大勢いた切符切り要員はどうしたのだろうか。配置転換されたかレイオフされたか。それとも、規制が緩和され、駅中に各種商店が生まれたので、そこが新たな職場になったか?

 AI時代になり、切符切りのように、今後無くなる職業はどれかとまことしやかに雑誌などで、喧伝されているが、すでに、銀行員、税理士、会計士など少なからず影響が出ているようだ。

 経済産業省のデータによると、平成27年の日本のキャッシュレス決済の比率は18.4%。韓国の89.1%や中国の60%、カナダの55.4%などで、日本は世界的にも、この分野では遅れている。

 先日、ソフトバンクの孫正義社長の講演をYouTubeで見たが、彼は、QRコード決済サービス「PayPay(ソフトバンクとヤフーの合弁会社)」でのキャッシュレスサービスの日本展開を、自信をもって語っていた。有言実行、目標貫徹、規制突破大好きの彼のことだから一気に進めるに違いない。

 昔、台湾に行った時、路上のパーキング方式がただ白ペンキで駐車エリアの四角を書いただけだったのに驚いた。そのエリア内に駐車すると、巡回している管理者が車のワイパーに紙を挟むだけ。駐車エリアを利用した人はその紙を持って、最寄りの銀行や郵便局で代金を支払う。日本のようなコインパーキングの機器もいらないので設備投資金額はごくわずかで済む。これにQRコード支払い方式を加味すれば駐車管理者も不要で、さらにコストが安くなるはずだ。キャッシュレス先進国の韓国や中国では露天商でもQRコード表示するだけでキャッシュレス取引が開始できるという。これまでのような高額なレジシステムも不要なので、普及の速度は速いに違いない。

 昔、給料は現金支給だった。この給与袋が立つ(袋にたくさん札束が入っている)のが労働者のステータスだった。そして、その給料袋を奥方に手渡すことで夫としての威厳が保たれていた。それが、給与が振込になってからというもの、夫の地位は低下する一方だ。お金の入りだけでなく出もキャッシュレスになったら夫の立場など消滅しはしないか心配だ。

 当時の話題を2つ追加しておく。ある自動車工場の工場長が、もらったばかりの給料袋を車のドア上のルーフにちょっと置いた(たぶん給料袋は立っていたと思われる)まま走り出してしまい、全額路上にバラまいて無くしてしまったという出来事があった。また、これは小生の義兄の話だが、大手自動車会社に勤めていた彼は、給与が振込に変わった後でも数十年の間、奥さんに給料を現金で渡していたという。義姉は専業主婦で世情にも疎かったのだが、疑問に思わなかった。当然、中抜きしたお金は女に使ったわけだが、彼が定年退職をすると、義姉はコツコツと溜めたお金で新たに家を建てて、出ていってしまった。彼は古い家で一人寂しく老後を過ごしている。現金社会とキャシュレス社会のどちらがいいかはわからないが、時代は確実にキャシュレスの方向に、しかも急速に向かっている。

(ジャーナリスト 井上勝彦)2018-11

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