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『浦島太郎』は恋愛のバイブル

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(絵:そねたあゆみ)

 彼の最後のオンナでありたいという乙女の願いは、今も昔も変わりません。これを実現するためのバイブルが実は日本にあります。それは『浦島太郎』です。時代によって呼び方は変わりますが、話の展開は約1300年前に成立した『日本書紀』の頃から変わっていません。

 現代の『浦島太郎』から恋愛のバイブルなんて想像もつかないでしょうが、元々は浦島太郎と乙姫は夫婦です。改変されたのは明治時代で、教科書に載せるため男女関係を匂わす記述を排除したのです。

 さあこうなると、物語の読み方が変わってきます。浦島太郎に助けられた亀は乙姫自身です。ここで乙姫は恋に落ちます。いつの時代も恋する乙女は強いも。あの手この手を使って浦島太郎を竜宮城やそれに準ずる施設に誘い込み、夫婦になることに成功します。しばらくは仲睦まじく暮らしていたものの、浦島太郎が故郷に戻りたいというではありませんか。浦島太郎に首ったけの乙姫、大ピンチです。

 こんな時、並みの乙女なら泣きわめいて引き止めるでしょうが、乙姫は違います。玉手箱を一つ手渡して、浦島太郎を気持ち良く見送りました。イイ女です。一言「この玉手箱は決して開けないように」と念を押して。こう言われても開けてみたくなるのが人のサガで。浦島太郎も御多分に漏れず開けてしまいます。開けた玉手箱からはもやが立ち上り、浦島太郎は老人になってしまいました。『御伽草子』では鶴に変化しています。

 この「もや」とは一体何だったのでしょうか。老人になったことを考えると、恐らく時間です。乙姫から手渡されていることから「思い出」とも捉えられます。浦島太郎は二人で過ごした時間、思い出を振り返っているうちに老人になってしまったのでしょう。こうなると新しい恋などできません。これこそが乙姫の狙いだったのでしょう。ありったけの思い出を浦島太郎に思い出させ、他の女性に目を向けさせない。『御伽草子』バージョンでは、浦島太郎は鶴になって亀の乙姫と蓬莱山で暮らすようになっていますから、復縁までしてしまっています。乙姫の一途な思いには感服です。もし、恋人と別れたくない、もしくは復縁したいと願うなら、乙姫にならって二人で過ごした時間を相手に思い出してもらうよう仕向けてはいかがでしょうか。良い結果になるかも知れませんよ。

(講談師、コラムニスト 旭堂花鱗) 2019-06

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