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改革は目で見せるに限る 

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絵:そねたあゆみ

 今、話題のキャッシュレス決済ですが、便利な反面、コンビニ大手のセブンイレブンが被害に遭うなど、その裏表としての危うさを露呈、その普及を危ぶむ声が出ましたよね。でも、結論から言えば、私は「それでもこれは普及する」と思います。もちろん、かく言う私は昭和のアナログ人間。この方面のことなどわかるはずもなく。ではなぜ、そんなことを言うかというと、歴史的にこういうものはそういうものだからです。

 明治期、博多で初めて電灯が導入された際には、「ランプで充分」、「ロウソクで困っていない」などという声が多かったと言いますが、これってまさしく、今のキャッシュレス決済への、「アナログが一番」、「紙幣で充分」と似てませんか?

 このときは、話が一向に進まないのに業を煮やした推進派が、銀行の招待旅行と称して、既に電灯を導入済みだった熊本に消極派を案内。すると、一同、その明るさに驚愕。口々に、「これからは電灯だ」となったと。(ちなみに、そのときの電球は20ワット弱。今なら便所の電球以下。)つまり、改革は目で見せるに限るということですね。

 事実、秀吉は、それまでの城攻めと違い、高松城水攻め、小田原一夜城のように、敵味方、誰の目にも見えるような形で攻めましたし、ナポレオンに至ってはイタリアに侵攻後、すぐに賠償金交渉を開始。金額が決まると、金貨で受け取り、そのまま、パリの議会に運んで壇上に山の如く積み重ねさせたと言います。山吹色の輝きは何より雄弁で、多額の戦費要求が満場一致で可決されたとか。(毎度思いますが、スポーツの優勝者などに渡される賞品賞金も、紙に書いた目録などではなく、レプリカでも良いから現物を見せろよと。)

 ただ、日本で最初に鉄道敷設の話が出た際には、大久保利通でさえも「時期尚早」と言って渋ったのを(無理もない話で、鉄道建設資金は当時の国家予算より多かったとか。)、大隈重信と伊藤博文が「改革は目で見せるに限る」とばかりに強行。実際に出来て試乗してみると、大久保までが、「これからは鉄道なくして国家の繁栄はない」となり、一気に鉄道建設が進むことになったと。(ただ、この正気の沙汰とも思えぬ巨額の設備投資には反対も多く、西郷隆盛などは最後まで猛反対で、これが、大久保と西郷、盟友仲違いの一因となったとも。便利さの実感とそれに伴うコストの問題。これはいつの時代も、悩ましいものなのでしょう。)

 ちなみに、電灯の発明と言えば、「日本の竹を使った」ことで知られるエジソン・・・ではなく、実はその1年前のイギリス人ジョゼフ・スワン・・・なのに、嗚呼、それなのに、当時のイギリス産業界は「ガス灯でいい」と言ったとか。(小説家 池田平太郎)2019-10

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