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ダイエットという食文化(後編)

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(絵:吉田たつちか)

●低所得者ほど肥満が多い?

 前回、現在社会において『豊かな人=自分の体形に気をつかい、なおかつスポーツジム等にいける経済的余裕がある』と見なされるようになったという説があることを書きました。

 確かに食糧が余っている先進国において『太っている人=自己管理ができないだらしない人』という太りがちな体質の人には可哀そうな烙印が押されてしまうことがあるようです。

 実際のところ、低所得者ほど肥満率が高くなる傾向があります。厚生労働省の調査によると

「肥満者の割合は男女とも低所得層のほうが高い傾向にあり年収600万円以上の男性の肥満率は25.6%であるのに対し、年収200万円未満の低所得者38.8%と13.2ポイントの差がある」

「低所得世帯は高所得世帯に比べて、肉や野菜の摂取が少なく、穀物の摂取が多く、栄養バランスが取れていない」

とのこと。

 貧困層ほどハンバーガーなどジャンクな食べ物、カロリーが高く栄養が低いものでお腹を満たしがちということなのでしょう。

●ダイエット食品の闇

 これほどダイエット食がブームになっている昨今ですが、これらブームに付け込んで悪徳商法も少なくありません。特にダイエットサプリで本当に痩せるものはほとんどなく、もし本当に痩せるとしたら、体に害があるので(下痢をするとか)痩せるといったものが多いとか。

 ダイエットブームは単に痩せるというのが目的だけではなく、同時に「健康でありたい」「成人病予防や治療の一環」というのもあります。しかし中には効果は少なく害が多いものもあるので注意してほしいものです。

 やはりいかに美容や健康のためとはいえ「ダイエット食品」や「健康食品」と銘打った〝商品〟よりも、普段の食べ物からカロリーや栄養を考えて美味しく食べてさらに痩せたり健康になったりするなどの工夫したほうが良さそうです。

●ダイエットが変える食文化

 いまや老いも若きも、男も女もダイエットダイエット。いまや若い女性に関しては終戦直後の食糧難の時代より摂取カロリーが低くなっています。

 その理由はダイエットや健康のためであり、昔は多く摂っていた炭水化物が減っているのが原因。中には、栄養失調状態になる人や、極端な過食や拒食になる摂食障害になる人が、女性ならは生涯に10人に1人の割合でいるという時代になりました。

 食は文化とはよく言ったもので、戦前は「白いご飯をお腹いっぱい食べるのが夢」だったのが、現在では「お腹いっぱい食べたいけど、食べると太るから食べない」という食文化になったのです。

 そう、ダイエットブームは現在の食文化に大きな影響を与えているのです。

スーパーマーケットやコンビニに行くと「糖質ゼロ」と銘打ったカップ麺や「低カロリー」「コレステロールゼロ」のドレッシングにマヨネーズなどが並んでいます。

 最近まであまり注目されていなかった「サラダチキン」や「鯖の水煮」の缶詰が大ヒットしたり、「低糖質のパン」やごはんに混ぜて炊くカロリーがほとんどない「コンニャク」が商品化されて売られていたりします。

 これら太りにくい食品の流行は、人類に文明が生まれてはじめてのことでしょう。

さてさて、20世紀後半から21世紀に生まれた「ダイエットブーム」は、明らかに食文化を変えてきました。

 いまや地球や世界は狭くなり、日本からはるかに遠い南半球やアフリカ、北欧といった場所の食材や料理が、スーパーマーケットに並んだり電話やネットでカンタンにお取り寄せができる時代となりました。

「とにかくお腹いっぱい食べたい」という時代は去り、「美味しいものを食べたいけど……」と、食べるのを躊躇したり、美味しさよりもカロリーオフや糖質を少ないものを選ぶ人が多くなりました。食文化とは面白いものですね。

(食文化研究家:巨椋修(おぐらおさむ))2020-01

おぐらおさむの漫画「まり先生の心のお薬研究室」連載をネットで無料配信、スタート

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