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テレビとネットの垣根

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(絵:吉田たつちか)

 長引く新型コロナでの緊急事態宣言下でスティホーム状態が日常化している。ストレスも貯まる一方だ。
 コロナ感染者数の発表や高齢者向けの健康薬品、健康器具の宣伝に占領されている昨今のテレビも見飽きた。
 ネットで映画を見るため10数年前に買ったプロジェクターを押入れの奥から引っ張り出してみると、電球交換が必要な事がわかった。調べるとすごく高い。この電球の値段なら同等以上の性能のプロジェクターが購入できる。
 悩んだ末、小生が判断したのはプロジェクターでなく、大型テレビを買うことだった。中国製のテレビが割安だったので、知らないメーカー名だったが、これに決めた。ネットで購入したのだが、電気屋さんが2人がかりで2階まで運び上げ、開封セットアップして、ケースなどのゴミも持ち帰ってくれた。
 聞くと、最寄りの小さな家電販売店が大手ネットショップに委任されてこの仕事をしているのだという。自分でやればセットアップに何時間もかかるし、最新のテレビが見れるようにするには至難の技だ。
 今回、小生が驚いたことが一つある。リモコンがこれまでのものと違っているのだ。これまでのリモコンは選局用チャンネルボタン数字が1~12しかなかたのに、今回のものは、最下段に大きなボタンが2つ配置されている。左側の白いボタンにはNETFLEX、右側の赤いボタンにはYouTubeと刻印されている。しかも数字キーボタンの2倍の大きさだ。日本メーカーのテレビ製造撤退が相次いだ昨今、日本の既得権益にとらわれないテレビやリモコンが続々登場してくると、テレビ業界の頼みの綱であった高齢者がことごとく、ネットにシフトしていくことは必定だ。ことは、リモコンにボタンが2つ増えただけでは済まない。テレビや新聞では自分たちの領域が浸食されるのを恐れて、このことはまったくニュースや話題で取り上げられていない。たかがボタンが2つ増えたに過ぎないと思ったら大間違いだ。高齢者はテレビのチャンネルボタンを押す感覚で、この2つのボタンを押す。かくてネット弱者を卒業した高齢者が続々と、しかも、無意識にネット放映に移動すること必定だ。
 だって、テレビよりずっと面白いもの。小生が今はまっているNETFLEXの映画はブラックミラーシリーズだ。NETFLEXは次の戦略としてアマゾンに狙いを定めている。2021年6月にアメリカで「Netflix.shop」を開始したが、日本でも数か月以内に通販事業を開始させるようだ。アマゾンフリークにとって、強力な競争相手の出現は願ってもないことだ。ますます、長生きしなければと思うこの頃だ。(ジャーナリスト 井上勝彦)

(ジャーナリスト 井上勝彦)2021-10

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