(絵:吉田たつちか)
「チャーハン」と「焼き飯」。お店に行っても、家庭の中でも両方の呼びかたをし、あるいは冷凍食品でも両方の呼び方の商品がある食べ物。
お店によっては「五目焼き飯」の下に「キムチチャーハン」という商品名が並んでいるメニューもあるから、なんともややこしい。お店の人に聞くと、具材違いだけで基本的な作り方は一緒だというのです。
つまり同じ料理なのに、呼びかたが二つあるらしい。例えば「ラーメン」と「中華そば」は同じ料理だけど、呼びかたがふたつあるようなもの。
ちなみに「ラーメン」という呼びかたは、それまで「中華そば」や「支那そば」という呼びかたが一般的でしたが昭和33年日清食品が「チキンラーメン」という即席めんを発売し、マスコミで大々的にコマーシャルをしたことから、「ラーメン」の呼びかたが定着しました。
では「チャーハン」と「焼き飯」はどうなのかというと昭和33年にあみ印食品が「炒飯の素」という即席の粉末食品を、関東を中心に売り出したことで、「チャーハン」という呼びかたが、関東において一般化。
さてここで「関東において」と述べましたが、関西ではちょっと違う流れがあったようです。
関西は、「お好み焼き」「焼きそば」に代表されるように、粉ものが好まれる食文化がありました。そして「お好み焼き」や「焼きそば」を料理するのは、中華鍋でもフライパンでもなく、大きな鉄板です。
ここで「チャーハン」と「焼き飯」のルーツに違いが見えてきました。「チャーハン」は漢字で書くと「炒飯」炒(いた)める飯。強い火力でお玉を使って作ります。「焼き飯」は焼く飯。大きな鉄板にご飯を乗せ、ヘラで押し付けるなどして鉄板焼きにします。
「チャーハン」の味付けは中華風。「焼き飯」は鉄板焼きらしくソースや醤油がベース。この二つの料理は、時代を経るに従い、呼びかたが混在してきたようですが、関東では「チャーハン」と呼ぶ人が多く、関西では「焼き飯」という人が多いのだとか。
また、地方や時代によっては、焼いたおにぎりを「焼き飯」と呼ぶ場合があったり、江戸時代は雑炊などを「焼き飯」と呼ぶ場合もあったようです。
また、ちょっと見が似ている料理として「ピラフ」があります。「ピラフ」はトルコあるいはインドの発祥と言われ、やがてフランスに伝わった料理で、洋風の炊き込みご飯です。
「ピラフ」はイタリアに渡ると「リゾット」に変化し、スペインに伝わると「パエリア」になります。
では最後に、「チャーハン」にせよ「焼き飯」にせよ、冷えたご飯で作ると美味しいという伝説がありますが、これは間違い。大きなレストランの総料理長に聞いたところ、それは保温器がなかった時代、冷えたご飯を美味しく食べるための工夫で、本当は温かい炊き立てで作るのが一番美味しいそうですよ。
(食文化研究家:巨椋修(おぐらおさむ))2021-10