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『シンデレラ』のセールス手法

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(絵:吉田たつちか)

 今やサクセスストーリーの代名詞ともいわれる童話『シンデレラ』。ディズニー映画にもなり世界中で愛されているお話です。女の子の夢ともいえますね。実はこの『シンデレラ』というお話映画になったから愛されているわけではありません。愛されるためのお話の構成になっているのです。これを知っておけばビジネスシーン、特にセールスにも利用できますよ。
 お話の始まりは、主人公であるシンデレラが苦境に立たされている場面。これは彼女の「日常」ですね。この日常が崩れたのは魔法使いのお婆さんと出会ってからです。そして印象的なアイテム・ガラスの靴を与えられます。お話のここまででも、セールスに使える要素がいっぱいなんですよ。何気ない「日常」を変えるきっかけを作るのは弊社の商品です、というように売り込むことができれば顧客の目は輝くでしょう。
 しかし、ダラダラと続いてきた「日常」を変えるのには、魅力的なアイテムを持つだけではいけません。魔法使いのお婆さんがシンデレラに口を酸っぱくして言ったのは、魔法が解ける時間があるということ。これをセールスに置き換えるなら、利用規約です。これを守ってもらえれば「日常」は変わっていくでしょう、と伝える。心理的にもすんなり手を入れたものよりも、多少制約があった方が大事にするものなんですよ。
 忘れてはならないのが、「日常」はやっぱりすんなり崩れることはないということです。シンデレラも一度は日常に戻っています。効果を出すのには、時間がかかるもの。商品を使いこなすまでの経験を積む時間ともいえます。シンデレラも今まで味わったことのない世界を受け入れるためには、いったん日常に戻る必要があったでしょう。これも顧客に伝えることが重要です。デメリットと思えることでも、勇気を出して話しましょう。
 最終的に購入してもらうには、「この商品はあなたのためにあつらえた物」と思ってもらうことが大切になります。シンデレラの場合は、お城で落としたガラスの靴が足にピッタリだったことが最後の一押しになりました。これをセールスに置き換えるなら、商品がある日常を顧客に想像してもらうのが最適です。今までの日常とはワンランク上の「日常」が待っていると。このように『シンデレラ』には、セールスに使える流れが詰まっています。商品ではなく自分を売り込むのにも使えるテクです。『シンデレラ』が世界中で愛されているのは、彼女に私たちが知らずに売り込まれていたからです。

(コラムニスト ふじかわ陽子)2022-02

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