UA-77435066-1

南蛮料理の歴史

 | 

(絵:吉田たつちか)

 「チキン南蛮」「鴨南蛮」「カレー南蛮」と、よく聞く「南蛮」。はたして、この「南蛮」って何なのでしょうか?
 南蛮という言葉は、戦国時代にポルトガルやスペインといった国との貿易でもたらされた海外からのものを「南蛮渡来」と呼ぶことに由来しています。本来は、中国の朝廷に従わない南方の野蛮地域を指す言葉でしたが、日本においては、東南アジア、ひいてはその向こうから来たポルトガルやスペインを含め、異国風の珍しいものを指すようになりました。
 徳川幕府の時代になってから、鎖国によってヨーロッパからの貿易は大きく規制され、西洋文化も入ってこなくなりましたが、なぜか西洋からの料理は「南蛮料理」として形を変えながらも日本に定着したようです。天ぷらなどがその代表格でしょう。
 「南蛮料理」は、長ネギやトウガラシを使ったものが多いのですが、長ネギはポルトガル人やスペイン人が健康維持のためによく食べていたのが由来。そのため蕎麦屋ではネギを南蛮といい、ネギが入っているそばやうどんを「●●南蛮」というようになったとか。
 「カレー南蛮」という料理がありますが、カレー南蛮とカレーうどんの違いってわかりますでしょうか? それは長ネギが入っているかどうかの違い。他にも一般的に「鴨南蛮」「肉南蛮」も長ネギ入りのものを指します。
 トウガラシも戦国時代にヨーロッパから入ってきた香辛料です。岐阜県の郡上地域では、トウガラシのことを「南蛮」と呼び、この地方ではトウガラシの若葉と身を、醤油と砂糖などで煮つめたものを「南蛮煮」と呼びます。
他に「南蛮煮」という呼び名の料理として、主になる材料をねぎと一緒に煮た料理や、唐辛子を使って辛みをつけた煮物、また、材料を油で炒めたり、揚げたりしてから煮た料理も「南蛮煮」といいます。
「南蛮漬け」というものもあります。魚や肉を油で揚げたあと、長ねぎなどの香味野菜や唐辛子と共に甘酢に漬けた料理のこと。
当時スペインやポルトガルから入って来た「エスカベッシュ」という料理が南蛮漬けの起源だとされています。エスカベッシュのことを日本では、地中海の南蛮漬けと紹介することが多いのですが本家はこちら。また、肉や魚を油で揚げてから調味液に漬けることを「マリネする」といいますが、南蛮漬けは、マリネの一種ということになります。
他に「南蛮」と同じように当時海外から入ってきたものに「唐」の字を当てることもあります。トウガラシは漢字で唐辛子、別名南蛮ガラシや南蛮胡椒。トウモロコシは唐黍。別名南蛮キビなどなど。
日本には世界中から、いろいろな食材や料理が入ってきて、独特の発達をして来ました。つまり私たちの食卓は南蛮渡来のものであふれているといえそうですね。

(食文化研究家:巨椋修(おぐらおさむ))2022-03

おぐらおさむの漫画「まり先生の心のお薬研究室」連載をネットで無料配信、スタート

コメントを残す