UA-77435066-1

「焼きそば」は和食? 洋食? 中華?

 | 

(絵:吉田たつちか)

●「焼きそば」は和食? 洋食? 中華?
 皆さんは「焼きそば」は和食だと思いますか? それとも洋食? あるいは中華? 焼きそばは中華そばの麺を炒める料理。味付けは醤油、塩味もありますが、基本的にはウスターソースの『ソース焼きそば』
そもそも焼きそばはどこで誕生した料理かというと、それは日本なのです。ただし焼きそばのルーツは中国の「炒麺(チャオミェン)」という中華麺を豚肉や野菜と炒めた料理と言われています。
 明治維新後、多くの中国人が日本に移り住んできて、やがてラーメンが日本の国民食になったのと同様、炒麺も日本人向けに改良され「焼きそば」へと進化しました。
 ひとつ面白いのは、焼きそばは中国風の調味料ではなく、イギリス由来のウスターソースが焼きそばの調味料として使われてきたというところです。
 そして日本の焼きそばは「もんじゃ焼き」や「お好み焼き」同様、鉄板焼きとして駄菓子屋などから普及していったようです。
 「焼きそば」は和食? 洋食? 中華?」という問いに答えるとすれば、お好み焼きなどの鉄板焼きが「一銭洋食」と呼ばれていた歴史がありますので「洋食」としてもいいかもしれません。
 でも焼きそばには和・洋・中のすべてが入っているので、そう厳しく定義づけすることもないでしょう。焼きそばの発祥は、お好み焼きの鉄板から中華麺を焼いてみたというところからはじまっています。
ちなみに「焼きめし」のはじまりも、お好み焼きの鉄板でごはんを焼いてみたところからはじまっているようです。

●洋食とは何か?

 日本に西洋の料理が入ってきたのは幕末から明治維新にかけて。ほとんどの日本人は、異国の西洋食を「美味しい」とは思わなかったようです。現在の日本料理には、砂糖がたっぷりと使われていますが、これは明治大正期に、日本人の口に合わなかった肉などの西洋食を日本人の口に合うようにした影響もあるのかも知れません。
 明治大正期の日本人は「自分たちは西洋より遅れている」「西洋からあらゆるものを学ばねばならない」という精神性から、食事も西洋風のものを取り入れたかったのです。
 でも当時の日本人にとっては不味い・口に合わない。例えば文明開化の象徴的料理の牛鍋は、味噌だれか醤油だれを使い、砂糖をたくさん入れて食べ慣れない牛肉を食べやすくしました。
 大正時代になると、カレー・コロッケ・とんかつが三大洋食として、日本に広まります。でもこれ、全部日本人の口に合うように、改良された料理なんです。
 カレー母国のインド人が日本に来てカレーを食べると「美味しい。これなんていう料理?」と聞きますが、もはやインドのカレーとは別物に進化したということでしょう。
 コロッケの原型はフランスのクロケット。このクロケットが、日本に入ってくるとイギリス料理の影響かジャガイモベースなものに変化しました。
 とんかつはフランスの子牛肉にパン粉をつけ、多量のバターで炒め焼きしたコートレットという料理ですが、当時の日本人には「不味くて食えたものじゃない」ものでした。
 そこで煉瓦亭のオーナーである木田元次郎が、子牛肉を豚肉にし、バターではなく、天ぷらを参考に大量の油で揚げるものになりました。
 とんかつの付け合わせはキャベツが定番ですが、当初は西洋と同じく温野菜でした。しかし日清戦争が勃発し、従業員が徴兵されると、温野菜の手間を省くためにキャベツの千切りを提供するようになりました。
 当時の日本人には生野菜を食べる習慣がほとんどありませんでしたが、大根の千切りは好まれていましたので、もしかしたら大根の千切りを参考にキャベツの千切りを考案したのかもしれません。
 油で揚げた豚肉と千切りキャベツは相性が良くいまでは千切りキャベツが欠かせないものとなっています。
 このように『洋食』とは、西洋から入ってきた料理を日本人の口に合うように改良したものなのです。
 一方『和食』とは日本の伝統的な料理を現代人の口に合うように改良した料理といっていいでしょう。
 洋食と和食は融合することもあり、いまも進化を続けながら、私たちの口を楽しませてくれ続けています。

(巨椋修(おぐらおさむ):食文化研究家)24-09

おぐらおさむの漫画「まり先生の心のお薬研究室」連載をネットで無料配信、スタート

コメントを残す