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蛙が教える努力の素晴らしさ

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0511_4日本のカードゲームの代表的なものに、花札がある。これは、天正年間(1573~1585)に入ってきたポルトガルのトランプのようなものが、日本人でも楽しめるように改良されたもので、今でもゲームの一つとして残っている。別名、花カルタとも言う。1月から12月の季節の花をカードに現し、各4枚ずつ、計48枚の組み合わせにより、点数を競う。

11月の札で、雨の中、傘をさす烏帽子姿の男性の目の前で、蛙が柳の枝に飛びつこうとしているものがあるのをご存知であろうか。この男性は、実在の人物だ。小野東風という書家で、歌人として、また恋多き女性としても有名な小野小町の従兄にあたる人。書家として大成しながらも、慢心をせず、晩年まで努力を続けた人らしい。彼に努力の素晴らしさを教えたのが、花札に彼と共に描かれている、蛙だ。

ある日、東風は、蛙が自分の背丈の何倍もの高さにある柳の枝に飛びつこうとしているのを見た。この蛙には到底無理なことだと、眺めていた。しかし、次の日に同じ柳の木の前に来てみると、また蛙が挑戦しているではないか。

そして、遂に蛙は柳の枝につかまることが出来たのである。この様を見つめて東風、日々精進を続けていれば、何事も成し遂げられると悟り更に努力を重ねるのだった。

この話は『小野道風、青柳硯』という歌舞伎にもなっている。歌舞伎では、ガマ蛙が柳の枝に飛びつくという設定になっているが、ガマ蛙は地面をノソノソを這う程度の脚力しか持ち合わせていない。

それでは、あの札に描かれている蛙は何カエルだということになるが、日本に生息する蛙で柳の枝ほどの高さまで飛び上がることが可能なのは、雨蛙だ。

寒さの増してくる11月には、雨蛙は活動をしていない。何故、この月の絵柄に描かれているか考えてみた。冷たい雨の降る11月だからこそ、逆境にもめげず、努力を怠るなということだろうか。そう深読みすると、花札も一味違った面白さも生まれてきた。

 (文:講談師 旭堂花鱗/絵:吉田たつちか)

 

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