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食材に国境なし

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(絵:吉田たつちか)

●食材は世界に伝播する
 2020年4月6日現在、世界中に広まっている新型コロナウィルスですが、この文章を皆様がお読みになる頃はどうなっているのでしょうか?
 病気に国境がないように、料理や食材にも国境はありません。例えばジャガイモ。ジャガイモの原産地は南米のアンデス山脈です。ジャガイモがヨーロッパに伝わったのは15~16世紀の大航海時代、ヨーロッパ人がアメリカ大陸を発見し、ジャガイモをはじめトウモロコシ、サツマイモ、トマト、カボチャ、トウガラシと様々な作物がヨーロッパに運ばれ、ヨーロッパから全世界に広まりました。
 ジャガイモがヨーロッパに運ばれたのが、16世紀の後半ごろとされていて、ヨーロッパから日本に運ばれたのも、慶長3年(1598年)つまり16世紀末にオランダ人が長崎に持ち込んだのが最初、つまりほとんど間をおかずに世界中に広まったことがわかります。
 ちょっと面白いのが、同時期に中国から入ってきたと言われるサツマイモ(ジャガイモと同じくサツマイモも南米が原産)が薩摩(鹿児島)など南国で栽培されたのに対して、ジャガイモは寒冷地に広まりました。
 ただしヨーロッパにおいてジャガイモはゴツゴツした容姿や芽や葉に毒があることから、食用として普及するのは18世紀後半であり、日本での普及は飢饉などの救済食品としてでした。

●中国で生まれた麺が南米原産のトマトと出会うと
18世紀、一説によると中国で生まれた麺がシルクロードを渡りイタリアのスパゲティになり、南米原産のトマトがやがてスパゲティと出会うことで、トマトソースのスパゲティが誕生します。
 トマトもジャガイモと同じく最初は食べ物ではなく観賞用植物として普及しました。しかしイタリア人々はある日このトマトを加熱してソースにすることを思いつきます。
 トマトは元々とても酸っぱくて、現在のイタリアでもあまり生で食べる人はいませんでした。しかし加熱してソースにするとその酸味が美味しいとなり、スパゲティにからめて食べる料理を発明します。
 新大陸原産の食材としては他にトウガラシがあります。このトウガラシも世界の料理を変えた作物。
「エッ、どういうこと?」と思う人もいるかも知れません。中南米が原産地ですが、これが中国に渡ることであの辛い中華料理、麻婆豆腐もエビチリも生まれませんでした。それに韓国のキムチも。
 トウガラシはピーマン、パプリカ、シシトウの仲間でナス科トウガラシ属。ピーマン・パプリカ・シシトウは甘トウガラシと呼ばれるもので、元々は辛いトウガラシの変種です。そのためかピーマンを英語だとグリーン・ペッパー、緑のコショウという意味。ピーマンの語源は
フランス語のピマンでこれは元々辛いトウガラシ・辛くないトウガラシの総称。 もしこのトウガラシ類がなければ、世界の料理はどれだけ味気なくなったことでしょう。
 今回は中南米原産の作物とそれが世界に広がって世界の料理に大きな影響を与えたことについて述べました。
 料理に国境はありません。どこかの地球の裏側で誕生した違った食材がどこかで出会い、新しい料理が生まれます。現在でも世界のどこかで新しい料理が生まれ、やがてそれが食文化となっていくことでしょう。
   (食文化研究家:巨椋修(おぐらおさむ))2020-05

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