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『金の斧』で学ぶパワハラ対処法

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(絵:吉田たつちか)

世界中で愛されるイソップ童話『金の斧』をご存じでしょうか。タイトルにピンとこなくても、内容を聞くと恐らく日本中の方が知っている有名な話です。
あらすじはこうです。ある男が泉にうっかり鉄の斧を落としてしまったところ、この泉の中から女神がすっと現れて男に尋ねるのです。「あなたが落としたのは金の斧ですか?それとも銀の斧ですか?」男は正直に「鉄の斧」だと答えると、女神はその正直さを讃え金の斧も銀の斧も男に与えました。その後、欲張りな男が同じようにしようとしますが、嘘を吐いたため、自分の鉄の斧も女神から返してもらえなかった、というものです。
この『金の斧』は、正直であることが大切だと伝える寓話とされていますが、これだけでなく現代のパワハラ問題にも使える話です。それはパワハラによく使われる心理状態「ダブルバインド」から逃れる方法を、『金の斧』が教えてくれているからなのです。
ダブルバインドとは選択肢を矛盾した2つのものしか用意しない状態で、他の選択肢を与えません。よくセールスである、「AとBどっちを買いますか?」というのも、ダブルバインドです。Cを買うという選択肢や、買わないという選択肢がないのです。
実はこれ、パワハラに多いものなんですよ。例えば、「分からないことがあったら質問しろ」と言っていたにも関わらず、いざ質問をしたら「忙しい時に聞くな」と突き放す。このような場面は、会社勤めの方なら1度や2度は目にしたことがあるでしょう。やられた相手は、何が正解か分からず混乱してしまい、最悪、精神疾患を発症してしまうでしょう。
このダブルバインドから逃れるために必要なのが、第3の存在です。『金の斧』の男が、自分の斧は鉄の斧だと女神に告げたのは、第3の存在を示すものでした。真実を第3の選択肢として、相手に提案するのが、ダブルバインドから逃れる唯一の方法です。
先の例なら、「忙しい時に聞くな」と突き放されたなら、「また後ほどうかがいます」と第3の提案をします。それを拒否するようでしたら、会社の人事に相談です。人事がいない会社なら、他の社員に相談しましょう。これも「第3」の提案、真実を証明するために必要なものです。
もし、社内での人間関係がつらいと感じた時は、『金の斧』を思い出してみてください。第3の存在が、きっとあなたを救ってくれるでしょう。(コラムニスト ふじかわ陽子)

(コラムニスト ふじかわ陽子)2022-04

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