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「凍眠」による冷凍革命

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(絵:吉田たつちか)

 老齢のママが店(スナック)をやめるというので、家人が引き継いでやると張り切っている。20数年前まで同じ街で25年間もスナックをやっていたキャリアがあるものの後期高齢者なので一度はとどめたが、決意が硬かったので協力することにした。協力といっても、開店前の店の掃除や看板出し程度しかできないが暇な時は海を眺めながら晩酌するのも悪くない。彼女の体力を考慮して、午後4時から午後9時を営業時間とした。客席が8人程度の小さな店なので人を使うほどではない。
 売上もたいして期待できないので、ロスを少なくして、赤字が出てもキズが浅くすむことを主眼にした。
 そこで、食材は冷凍食品を主体とすることにした。ネットの食材問屋を決め、ここからサンプル的に仕入れて、試食している。使えそうなのは、シュウマイ類、チジミ、芋餅などだ。
 免許返上で車も利用できないから、酒屋も1本から配達してくれ、空き瓶も回収してくれるところに決めた。
 原価計算をしてみると、水商売とはよくいったもので、利益率が一番いいのは日本酒。一番低いのがビールだ。でも、ビール(生ビールは手間がかかるしロスも出るので割愛)は、焼酎やウイスキーのように氷を出す必要がなく、瓶を出すだけなので、手間暇を考えると利益率は他の酒類と同等となる。
 冷凍といえば、先日、テレビで見た、「凍眠」が気になり、さっそく取り寄せて試食した。これは、従来の冷凍とは一線を画す画期的な技術だ。横浜にあるテクニカンという中小企業が開発した技術で、パックした食品を-30℃の液体(アルコール)で冷凍するシステム。通常の冷凍庫は「冷たい空気」で冷凍するが、凍眠は「冷たい液体」を使って冷凍する。凍眠で冷凍すると、最大氷結晶生成帯を素早く通過するため、氷結晶が非常に微細なので細胞破壊を防ぎ、解凍後も高い再現性を維持することが出来るのだという。
 同社はこの装置を10年前から販売していたが、使っている企業やお店から、冷凍したものをお店で出していることが分かると店のイメージがダウンするからと、口コミで広がらず販売に苦労したという。最近、テレビや雑誌で紹介されるや、引き合いが急増し、海外まで販路が広がっているそうだ。
 このところ、元気のない日本の企業の中にあって、この装置・システムは世界的に広がると思うし、かってのソニーやホンダのようなビッグ企業に変身する期待も寄せられている。
 同社は凍眠の認知度を高めるため、直営店「TŌMIN FROZEN」を横浜にオープン、ネットでも凍眠食品が買える。一流の職人が握ったという寿司もうまかったが、これは解凍する手間がややかかる。小生が今、はまっているのがしめ鯖と中トロ刺身だ。これで、スナックでの晩酌もグレードが上がった。
 「凍眠」というネーミングもいいが、なによりも飲食店での食品ロスが軽減され利益率が上がるのがいい。

 (ジャーナリスト 井上勝彦)
//www.technican.co.jp/product-info/tomin/
//ito-usami.info/orange

(ジャーナリスト 井上勝彦)2022-05

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