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鍋とお箸の熱くない関係

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13-06-1 囲炉裏や火鉢、七輪などが日本の鍋料理に与えたことを述べてきたわけですが、もうひとつ、日本の鍋料理に強い影響を与えたものがあります。
それはお箸。日本は中国や朝鮮といった箸文化圏の中でも、特に箸に特化しているのです。
では鍋料理と箸とどのような関係にあり、どのような影響を与えてきたのか?
鍋料理というのは、ぐつぐつと煮えている料理をお箸でつまんで食べることにその醍醐味がありますな。もちろん汁を自分の器に移すためにお玉を使うこともありますけど、お玉だけじゃあ鍋の醍醐味は味わえません。
では欧米風にフォークを使って鍋を楽しもうと思っても、できないことはないけれどちょっとよろしくない。フォークや朝鮮半島で使われている金属製のお箸だと、熱伝導が早くて鍋にはちょっと不向き。
中国式のお箸は、日本の箸にくらべて5センチほど長くて太さも太い。その結果当然重いのです。そして日本の箸の端(しゃれだけどしゃれではない)は細くなっていますが、中国の箸はあまり細くなっておりません。日本の箸の端が細いのは、魚など細かいところまで箸で食べやすくしている工夫です。
朝鮮の箸も中国ほどではありませんが、やはり日本の箸より長く、金属製ですから当然重い。
日本の箸は鍋の中を泳いでいるいろいろな具材を軽くキャッチできるわけですから、欧米のフォークや中国朝鮮の箸に比べても、もっとも鍋料理に向いている食事用器具なのです。
日本の鍋料理は世界的にみてめずらしいものなのですが、箸やフォークといった食事用器具を考えてみれば、日本で鍋料理が発達していったことも理解できます。
世界の食文化を見ると、手で直接料理を掴んで食べる『手食文化』が4割ほど。
約3割が、フォークやナイフを使う『食文化』
残りの約3割が『箸食文化』と言われています。
『手食文化』では、ぐつぐつと煮えている鍋に直接手を入れて食材をつまむことはできないから、当然、日本のような鍋の楽しみ方はできません。
フォークやナイフを使う食文化や、中国朝鮮のような箸では、やはり鍋にはちょっと不向きとなります。
そう考えると囲炉裏プラス日本式お箸が、日本の鍋料理を生んだというのも理解できます。

(食文化研究家 巨椋修/絵:そねたあゆみ)13-07

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