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『わらしべ長者』とビジネス

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(絵:吉田たつちか)

 昔話『わらしべ長者』は、些細な物から最後は高価な物を手に入れる比喩的表現で使われるほど有名なお話です。あらすじはこうです。ある貧しい男が観音様に貧乏を脱したいとお願いしたところ、観音様は「ここを出て最初に触れたものを大事にしなさい」とお告げしました。そして、最初に触れたものが藁だったのです。この藁が蜜柑となり、反物となり馬となり、遂には大きなお屋敷を男は手に入れます。
 これはただの幸運ではなく、需要と供給がマッチした結果です。交換相手は例え藁であっても、その時必要だと感じたからこそ交換しました。原価ではなく、相手が「必要」だと思うことこそが重要なのです。ビジネスの基本中の基本といえるものです。
 つい最近も、些細な物が高価になる出来事がありましたね。コロナ禍が始まり500円もしなかったマスクが、一時期は1万円を超える高値を付けていたのは記憶に新しいと思います。これも需要があるからこそ、この値段になっていました。
 他にも例があります。例えばYouTubeで焚き火を映しているだけのものがあります。ただ薪が燃えているだけで、元手はかかっていません。それなのにとても多くの人が、この動画を好んで視ているのです。ただの炎がとても癒されると、ストレスの多い現代社会を生きる人に好まれています。これも『わらしべ長者』的な需要と供給がマッチした例でしょう。このように一見価値のないものであっても、需要さえあれば大金になる可能性は昔話の世界だけでなく現代にもあるのです。
 では、どのようにして需要を見つければ良いのでしょうか?『わらしべ長者』の主人公である男の行動を見てみましょう。彼は困っている人に声をかけています。そしてその困りごとの解決のために、藁であったり蜜柑であったりを渡しているのです。そう、需要とは「困りごと」なのです。
 この「困りごと」を見つけるためには、何をすべきなのか?それは、人の話に耳を傾けることです。思い込みでなく、相手との対話の中から「困りごと」を見つけ出します。そして、聞き出した「困りごと」を解消できるものなら、相手はどんな些細な物であっても高値をつけるのです。
 あなたがもし、今ビジネスが上手くいっていないのなら、『わらしべ長者』をお手本に相手の「困りごと」に耳を傾けてみてはいかがでしょうか。
(コラムニスト ふじかわ陽子)2021-10

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