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昔話『雪娘』とAI友達

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(絵:吉田たつちか)

 人と人とのつながりが薄くなっている昨今、AIと会話することで寂しさを埋める人もいるのだそうです。AIといえど機械的に正解をはじき出すだけではなく、相手に共感することもできるため、わざわざ友達を作るよりも手軽で充実感のある会話ができるといいます。
 このように機械と友達になる発想は古今東西あり、よく知られているものでは漫画『ドラえもん』もそうですよね。また東北地方で語り継がれてきた昔話『雪娘』も、同じ発想で生まれたお話でしょう。なんせ、「雪」で友達を作るのですから。
 地域によっては雪から作られるのは子供であったり、若い女性であったり様々。また自ら雪で作る以外にも、冬の間だけ預かってほしいと大人に連れられてくることも。『雪娘』は日本だけでなく、ロシアでも同様の話が残っています。多くのパターンがある『雪娘』ですが、結末はすべて同じ。春の訪れとともに溶けて消えてしまう。本来なら嬉しいはずの暖かい季節の到来が、悲しい別れを迎えることになるとは、なんとも悲劇です。
 これは雪による閉塞感や寒さによる思考力の低下が見せる、幻覚が生んだ物語といえるかもしれません。また、雪により外部との交流が乏しくなる中、『雪娘』に希望を見出していたことも考えられます。何もこれは昔の雪国だけに起きている現象ではありません。現代も同じような状況になっていることにお気づきでしょうか。
 何事もスピード重視で、ゆっくり人と交流を重ねる暇はなく、スピード重視だからこそ乗り物に頼り運動不足に。運動不足だから血流が滞り、思考力も低下。他者に対する思いやりが低下し、人付き合いがおっくうになっている人は少なくないでしょう。そして誕生したのが「AI友達」です。
 AI友達は時間の制限がなく会話が楽しめますし、裏切ることもありません。他の友達が欲しくなったら、またAIで生み出せば良いのですからお手軽ですね。しかし、これはコンピューターと電力があってこその存在。ひとたび災害が起きてしまうと、一瞬にして消え去ってしまいます。雪娘と同じ実体がない存在が、AI友達といえるでしょう。(コラムニスト ふじかわ陽子)

    (コラムニスト ふじかわ陽子)2023-12

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