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砂糖の歴史と問題点

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(絵:吉田たつちか)

●人類は飢餓から解放されつつある?
 世界的大ベストセラー『サピエンス全史』の著者である歴史家ユヴァル・ノア・ハラリ氏によると、1692~1694年の間にフランスでは、人口の15%に当たる280万人もの人が飢餓で死亡したのですが、現在では飢餓より肥満が原因で亡くなる人の方が多くなりました。
 さらに、2012年に戦争や犯罪など暴力の犠牲となって死亡する人は62万人だったのに対し、糖尿病による死者は150万人。いまや人類にとって暴力や飢餓より【砂糖のほうが危険】な時代となっているのです。
 人類が発祥して約500万年、人類にとってもっとも大きな危険であった飢えから、どうやら解放されつつあるらしいのです。
特に先進国では栄養不足で亡くなる人は減り、むしろ肥満が大問題。貧困層ほど砂糖や糖分たっぷりの偏ったファストフードやスナック菓子でカロリーを摂取し、寿命を縮めている人が増えているといいます。
 文明が生まれて数千年、砂糖をたっぷり食べられる人など、つい最近までほんの一部の支配階級のみだったのにです。

●インドから世界に広まった砂糖
 砂糖の原料となるサトウキビは、ニューギニアが原産。やがてサトウキビはインドに伝わり、サトウキビの汁から砂糖が生産されるようになります。
 ちなみに、砂糖の英語名「SUGAR(シュガー)」の語源は、古代インドの言語であるサンスクリット語の「SARCARA(サルカラ)」で、紀元前327年、マケドニアの大王アレキサンダーが、インドに遠征したときの記録に「噛むと砕ける甘い石がある」とあり、これが砂糖の結晶ではないかと考えられています。砂糖はやがてインドからペルシャ(現代のイラン)や中国に伝えられていきました。
 ヨーロッパに伝わったのは11~13世紀に行われた十字軍遠征のときで、温暖な気候の地中海で栽培されるようになりました。中国には5~7世紀くらいに砂糖が作られていたようです。

●日本人と砂糖
 日本に砂糖が伝来したのは8世紀の奈良時代。最初は甘味料ではなく薬として扱われていました。
 やがて戦国時代になり、ヨーロッパとの貿易もはじまります。いわゆる南蛮貿易ですが、南蛮人たちは鉄砲だけではなく、砂糖を使った南蛮菓子も日本に持ってきます。
 江戸時代になると琉球王国(沖縄県)が最初にサトウキビや砂糖の製造をはじめるようになります。
 江戸中期には幕府が砂糖の輸入制限を行い、国産化を奨励。それまで一部の富裕層にしか手が届かなかった砂糖も料理などに使われるようになりました。
 砂糖という調味料は、醤油と相性が良く、世界の料理と比べても和食は砂糖を多く使う料理となりました。
 明治時代になると、鎖国制度が解かれ、海外から砂糖が輸入できるようになり、特に太平洋戦争後になると、庶民でも大量の砂糖を使えるようになりました。そんなこともあって、日本人にとって、糖尿病が国民病と言われるほど増えてしまったのです。
 さらに日本人は、欧米人に比べて体質的にインスリン分泌の能力が低く、糖尿病になりやすい体質だそうです。美味しいものを食べ続けるためにも、調味料などを工夫して日々の食事に気を付けたいものですね。

(巨椋修(おぐらおさむ):食文化研究家)24-04

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